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2017-08

教師教育メールマガジン12号、岡崎勝さんです! - 2017.08.06 Sun

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メールマガジン「教師教育を考える会」12号
          2017年8月6日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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自悶自闘自忘自希
  名古屋市立小学校非常勤講師/学校マガジン『おそい・はやい・ひく
  い・たかい』(ジャパンマシニスト)編集人      岡崎 勝
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第12号は、岡崎勝さん。学校マガジン『おそい・はやい・ひくい・た
かい』(ジャパンマシニスト)の編集人として、ラジカルな(しかしまっ
とうな)提案を長年にわたって続けてきた方です。すこぶる刺激的な原稿
を寄せてくださいました。               (石川 晋)
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 小学校の教員生活を40年近くやってきて、現在65歳。いまさらならが、
教員になったころとあまり問題意識も変わっていないし、何をみなさんに
お話ししようか……と。今までの方に比べ格調は確実に低いと思う。要注
意!

1)フリースクール立ち上げに参加して気づくこと
 二年半前から近所にできたフリースクールに理事として参加している。
今から20年前に愛知万博(2005年開催)に向けて高速道路を造ろうという
環境破壊計画が身近であった。行政の内部にそのことを教えてくれる人が
いて、反対運動をすぐにはじめた。仲間と抗議活動、住民監査請求や裁判
などいろいろしたが、現在、料金所予定地の土地トラストをしている。今
のところ工事は止まっている。
 それまで、いろいろと愛知県内で市民的あるいは教員的(勤務条件労働
問題、管理主義教育反対など)活動をしていた。しかし、その高速道路反
対“運動”がきっかけで、住んでいる自治会や地域で元気な友だちがたく
さんできた。その友人の一人が立ち上げたのが、フリースクールだ。
「アーレの樹」といい、アーレとは宝物(なぜかフィンランド語)という
意味だそうだ。
 午前中は名古屋市の小学校で、五六年生に理科を教えているので、週に
一度くらいだが、子どもたちに「学習」をしてもらおうと、自作プリント
や小道具を作って行く。物作りや実験などもするが、1年生から中2まであ
わせて5~7人なので、学年にこだわらずにネタを探して持ち込んでい
る。
 ところが、フリースクールに行くことで、逆に、つくづく学校というと
ころはいろんな意味ですごいなあと再確認することになった。とりあえ
ず、学校という所は、子どもたちは時間が来れば集まり、年齢別に分割さ
れ、教科書を持ち、机にちゃんと座って待つということが「当たり前のこ
と」になっているというすごさだ。今までもそう思っていたが、フリース
クールと比較して、つくづくすごいと実感した。
 フリースクールへ行っても、こどもたちは別に私を歓迎してくれるわけ
ではない。「この大人はセンセイなのだ」という、否定的なまなざしだけ
は感じるが、スタッフ以上ではない。何回か行けば、この大人は「何かお
もしろいことをやってくれるらしい」ということは分かってくるので、
「あ、岡崎センセイが来たぞ」という感じにはなる。
 しかし、全員が学校のように授業に向き合うわけではない。半身になっ
て一緒に学んだり、作業したり、考えたりするが、ふっと、「どうしても
やらなければいけませんか?」「いっしょにやらなければいけないの?」
というので、別にいいんだよというと、さっと別のところへ移動する子も
いるし、つかず離れずの子もいる。「もうちょっとやってみる」と言う子
もいる。いろいろなのだ。帰るときには「また来てね」ととりあえずは
言ってくれる。
 そして、じっとゆっくり付き合ってくると、彼らなりに何かしたいと
か、もっとエネルギーを発散したいとか、もっとおもしろいことに出会い
たいという気持ちがあるということだけは分かってくる。しかしそれは、
個別のようで集団的、集団のようで個別的な、なんともいえない、学校と
は違う「予定調和」「計画」にはちょっとなじまない学びの中身と学び方
(関わり方)があるのだなあと、ま、当たり前のことに気づく。しばら
く、フリースクール子どもとじっくりとつきあってみるかと思う。

2)学校って本当にいいものですか?
 これは、自分が1976年に管理職には絶対にならないと決意し教員になっ
たときから、ずっと考えてきたし、今も、課題になっている。新任のころ
から、村田栄一さんの戦後教育論や、持田栄一さんの教育政策論、岡村達
雄さんの公教育論、山本哲士さんの産業社会論に触れながら、毎日子ども
たちと生活していると、どうしても学校にこだわりながら、そこが窮屈に
思えていた。
 新任の頃からいくつかの民間教育団体に参加しながら授業の改革なり、
子どもたちによりよい授業を提起しようとそれなりに努力した。有名で優
れた実践家や研究者に直接会いながらも、「学校はそんなにいいものなの
でしょうか?」と自分なりのやり方で問いながら来たが、未だに答えは出
ていない。斎藤喜博さんや竹内敏晴さんには、かなり叱られた。
 新美南吉の作品は嫌いだけれど、「手袋を買いに」で最後に、母狐が
「ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやく場面だけが好きで、「学
校もほんとうにいいものかしら」と思う。(自分が小学校三年生の頃、
「この母狐は、危険な町に子どもを行かせて、ひどい母狐だと思う。自分
で買いに行くべきだ」と元気に意見を言って、担任にこっぴどく叱られた
記憶がある。それに新美南吉は地元愛知の作家で、読むけど、キライであ
る。教えるのは苦行以外でない。「ごんぎつね」は最悪だと思っている
(笑)。おとなしいと思っていた女子に「授業で、先生がごんぎつねがきら
いだということがよくわかった」と言われて反省したことがある。)
 教育実践とか授業実践は、どこまでいっても終点はないということは分
かっている。「子どもの目が輝いて」なんて話はどーでもいいのだが、と
りあえず、子どもに迷惑をかけない実践をほそぼそと世界の片隅でやれれ
ばいいやと思ってきた。
 若い頃、はしなくも講演したとき、「岡崎先生にとっての善い実践とは
なんですか?」とのフロアーからの質問に「子どもが喜んで、教員がラク
で、管理職が嫌がる実践です」と応えて、みんなに引かれたことがある
が、今でもそれはあまり変わっていない。最近は管理職が軟弱になってき
たので、許されてしまうことがおおくなって、あまり嫌がらないので困
る。あるいはこちらが軟弱になってきてしまったのか。

3)夏休みの短縮と部活で忙しいことについて
 夏休みが短くなることに教員が声を大にして反対しないことに私は怒っ
ている。教員は、自分の子ども時代の夏休みがよほど嫌だったのだろう
か。「はやく学校で生き生きしたいな」と思って、夏休みを過ごしていた
のだろうか?もしそうだとしたら、そいつらは地獄に堕ちろ(笑)と言い
たい。
 学校が休みということで、どれほどうれしくわくわくしたことか。今
だって、「明日の暴風警報六時まで頑張れ!」と黒板に書いて帰って行く
子がいるぞ。そんな思いしかない私は、夏休み短縮(しかも授業時数が
どーたらこたら)に声を上げない教員は、子どもの幸せとか笑顔で語って
欲しくない。
 夏休みが長くなれば、親が面倒くさくなるのは決まっている。それは親
が工夫して、なんとかしろよ!と思う。いやいや、それは親のフツーの仕
事でしょ。夏休みなんてホントにめんどくさいよ。お昼ご飯も用意しなく
ちゃいけないし、家でゴロゴロしていたりするし、宿題も手伝うの大変だ
し、そのくせ家の手伝いはなかなかしないし……でも、親子バトルがあっ
てこそ、それが親子の正しい姿じゃないのか?! 
 なんで夏休みの親子の問題や家庭の問題を学校が引き受けるのだ。夏休
みの宿題なんて二学期に見なくちゃ行けないし、子どもも大変だから出さ
なくていいんだよ。夏休みがあったから、子どもは、「ああ、明日から二
学期だけど、しょうがないからがんばるか」と言って九月に学校に来てく
れるんだろうと思う。もちろん諸事情でどうしても夏休み面倒見られない
親子は「要相談」でいい。例外はどこにでもある。
 親が子どもの面倒を見られないから学校に預けておけば安心というの
は、夏休み以外の話である。私は「学校託児所論」を主張してきたが、の
べつまくなし出校のような「学校刑務所論」は主張しない。休みの日と夜
は子どもを家へ返せ!ということだ。「休日の喜び」は働く者(子どもも
含む)の命だ。
 さてブラック部活について。ブラックかピンクは別として、基本的な原
則は、「部活は趣味でしかない」である。「暇な子どもが、暇な教員と、
公的施設を慎ましく使わせてもらってする趣味活動」というのが、私の部
活の定義だ。強くなりたい、いい成績を残したいと思うのは子どもも先生
も自由だから、そういうクラブを学校の外に自分たちで作ればいいのだ。
外部指導員なんか、指導は外部指導員、責任は教員の最悪ケースだ。外部
部活なら許す。
 内田良さんは正しい。内田さんは研究者として優れているので、はっき
りしていてよいのだ。金髪もうれしい。話せば普通の良識ある人です、私
が保障します。
 だが、私は、部活は趣味同好会以上でもそれ以下でもないと思う。趣味
の山登りやクイズ同好会と同じだ。趣味は自由だ。そこに教育的意義を見
いだしてもいいけど、押しつけるな、普遍化するな、控えめにしろ……で
ある。
 部活に参加する子どもたちの中にイヤぁーな同調圧力が見えたら、部活
は即中止。また、教員の指導顧問を全員に押しつけるような同調圧力が
あったら即中止が断然正しい。
 教員が職員会で「私は部活指導をしません。書記、記録お願いします」
で大抵は部活指導顧問はやらなくてすむ。「どうしてもやらせたいなら職
務命令を文書できちんと出してください」でいい。
 万が一職務命令出されたら「勤務時間終了時刻までやりますが、あとは
管理職でお願いします」でいい。部活で時間外勤務命令は違法だから出せ
ない。私はそうやってきた。「正しいと思うなら、みんなのいるところで
はっきりいいなさい」と子どもに指導している教員なら大丈夫、言えま
す。
 
4)『お・は』読んでください、あるいは、側においてください。
 私は20年くらい『おそい・はやい・ひくい・たかい』(ジャパンマシニ
スト社刊)の編集人をしてきました。来年100号になります。隔月とか季
刊でやってきました。今は季刊です。最新号98号は8月下旬です。
http://www.japama.jp/cgi-bin/oha/ohaBN.cgi
 あと、本や雑誌に色々書いてきました。残念ながら現在、ホームページ
は消失してしまいました。ブログは二つですが、不定期なのでごめんなさ
い。暇な人や興味のある人はのぞいてください。(告知専用のFBもありま
す。)
http://masaruokazaki.jugem.jp/

http://okazaki-oha.jugem.jp/

です。
 8月25日発刊「9月臨時増刊号 総特集=かこさとし」(『現代思想』)
に「『どろぼうがっこう』という学校異化」を書きました。
「なぜ学校は必要なんですか?」と子どもに聞かれて、わたしは「難しく
てわからない。ゴメンナサイ。そういう質問は頭のいい人に聞きなさい」
ととりあえず謝罪的に応えることにしています。なぜかというと、それは
質問ではなく、私にとっては子どもからの糾弾だからです。ただ、いくつ
になっても勉強ですね。みなさんから、学びたいと思います。どうぞよろ
しくお願いします。クソ真夏の中、福島から保養に来ている子どもたちと
まったり過ごしながら書きました。
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 部活動についての考え方、夏休み短縮に関する議論、大変共感を持って
読みました。8月6日は広島原爆が落とされた日。この日に、学校教育の
現在地を丁寧に疑っていくことから、次の新しい教育を考えていくため
に、岡崎さんの語りに静かに耳を傾けたい、そう思います。
 部活動に関していえば…岡崎さんは、体育教師です。体育の教師が丁寧
に語る部活動趣味論、みなさんどう読み、どう考えますか? 当たり前に
ある現実・現状を、丁寧に考え直しすることなしに、ここからの教員の像
を結ぶことはできないと私は考えます。

 次号は、8月8日火曜日。『学び合い』フォーラムを終えたばかりの、
今井清光さん(東京都立科学技術高等学校・教諭)さんです。高校の若手
の国語教員としての清新な提案をご期待ください。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
12号(読者数2391)2017年8月6日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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(まぐまぐ:教師教育を考える会)
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教師教育メールマガジン11号、鍋田修身さんです! - 2017.08.04 Fri

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メールマガジン「教師教育を考える会」11号
          2017年8月4日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 この2年間の変化とこれから
                島根県立隠岐島前高等学校常勤講師
                            鍋田 修身
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第11号は、鍋田修身(なべたおさみ)さん。都立高校を55歳にして
飛び出し、隠岐島前高校への進展を決めた「越境」の人です。現在日本
じゅうの注目を集める隠岐島前高校にあたって、その地での教職員の学び
の流れや育ちの状況を、語っていただきました。必読です。(石川 晋)
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1 今の私とその背景

 私が勤務する、島根県立隠岐島前高等学校は、島根県の離島、日本海に
浮かぶ隠岐諸島のひとつ島前・中ノ島(海士町)にあります。こちらへ来
たのは2年と少し前で、それまでは大学を出てから33年間ずっと東京都立
高校の教員でした。隠岐、島根とは全く縁もゆかりもない私が、ここで仕
事をしているのは、私の転職の1年前、東京の会社を辞めて海士町の公立
塾「隠岐國学習センター」へ転職した知人がきっかけです。彼のFacebook
投稿で紹介される海士町、そして「高校魅力化プロジェクト」が目を惹き
ました。〔参考1〕〔参考2〕
 島根県や海士町、そして隠岐島前高校が企画したイベントや説明会に参
加し、さらには実際に海士町に渡り、さまざまな見聞を重ねました。その
中で、私の心を強く惹きつけたのは、次のお二人の話でした。
 佃 実さん(当時・海士町教育長)「人間は多様。同じ人はいない。ま
た、人間は得意不得意、できるできない、強み弱みの凸凹がある。その凸
凹をお互いに補い合っていくのが、社会のあり方。それを学ぶのが学校で
ある」
 信岡良亮さん(現・アスノオト代表取締役)「ひとつのモデルを想定
し、それを目指して全員が走る。それに見合わない人はこぼれていく。た
どり着いた人たちで社会を牽引する。っていうのが今までの高度経済型の
社会なんですけど、海士町って人口が少ないので、そんなことやったら、
誰も残れないかもしれない。そうじゃなくて、そこにいる一人一人をベー
スにして、その人たちが幸せに生きていくことができる社会モデルを創出
することが大事なんですよね」
 東京で自分が長年取り組んできた教育は、まさに高度経済成長型の、そ
れも徹底した管理教育でした。その中で取り残され、切り捨てられていく
生徒さんたちを目の前にしながら、果たしてそれで良いのかという疑問は
ずっとありましたが、その解決策を求めて自らが踏み出すこともせず、
ずっとそのような教育活動を続けながら、20年以上を過ごしてしまいまし
た。
 そのような中で偶然にも機会をいただいたのが、東京都立中野地区チャ
レンジスクール開設準備室の仕事、そしてその後に出会った『学び合い』
の教育観でした。
 前者では、学校に行けなくなった生徒さんたちに、もう一度、学校(高
校)で学ぶ機会を提供するという学校を作るために、該当の生徒さんや保
護者の方達にお話を伺い、臨床心理学の研究者や臨床心理士の方たちと協
議する場をもち、私たちが見落とし、見過ごしていた生徒さんたちの心と
行動について学ぶ機会を得ました。
 後者については、今では多くの出版物が出回っていますが、当時はまだ
少なかったので、日本各地で実践されている先生方とお会いし、「一人も
見捨てない教育」について、自分のあり方を見つめなおす機会をいただき
ました。〔参考3〕
 教員として自らの「学び直し」をしていく中で、隠岐島前高校が「魅力
化プロジェクト」の一環として、日本全国から生徒を募集する「島留学」
だけでなく、そこで働く教員も「全国募集」するということがわかり、な
らば、自分に与えられた残りの時間をここで使い尽くしてみようと決意
し、日本海の離島へ渡ることにしました。

2 現在の隠岐島前高校はどんな学校か

(1)生徒さんたち
 現在は各学年2学級、1年生64名、2年生65名、3年生55名です。定員
は学年80名ですので、毎年定員を割っていますが、定員の3割を推薦枠と
して、島根県のみならず全国から募集しています。いわゆる「島留学」と
呼ばれているものです。推薦枠24名のところに50名以上が受験していま
す。一般入試の定員は、推薦枠を除いた56名ですが、島の中学生人口が少
なくなっていますので、在籍数から見ても分かる通り、定員以下の応募が
続いています。
 「島留学」は全国から集まってきますので、生徒さんたちは実に多様で
す。一方の一般入試で入ってくる島前三島出身の生徒さんの多くは、多少
年齢が違っても、小さい頃から一緒に遊んでいた仲間同士です。お互いを
よく知っていて、兄弟姉妹のような感じ、言い換えれば、みなまとめて家
族のような空気感があります。しかし一方では、固定化された関係の中で
それぞれの役割や位置付けが定まっていて、それぞれに異なる役割を演じ
ている側面もありますので、逆に言えば、それぞれに個性的であり、多様
とも言えます。
 そうやってみると、生徒数は決して多くないのですが、ある程度関わり
を持つようになると、実に多様な生徒さんたちの集合体であることが、と
てもよくわかります。島前に来るまでの33年間で、相当多様な生徒さんと
関わってきたつもりでしたが、33年分が一気に押し寄せるような多様さ
を、強く実感しています。少ないからどうしても見えてしまうものもある
かもしれませんし、授業のあり方を根本的に変えて、生徒さんたちを丁寧
に観ることを活動の主軸に置いたせいかもしれません。もしかすると、単
に長くこのような仕事をしてきたから、そう見えているだけかもしれませ
んが、いずれにせよ、多様な生徒さんの集団だと感じています。

(2)教職員の構成
 次のようになっています。
 校長1・教頭1・事務長1・教員24(教諭14・常勤講師10)・実
習助手1・養護教諭1・非常勤講師3・事務2・学校司書1、学校魅力化
コーディネーター5・隠岐國学習センタースタッフ1(さらに、島留学の
生徒さん達を受け入れる寮にハウスマスターが男女各1名います)
 特徴的なのは、教員定数の4割を常勤講師が占めていること、海士町や
島前地域と密接につながっている魅力化コーディネーターと学習センター
スタッフという立場の方たちが6名おり、教員24名と合わせるとその2割
にもなること、ではないかと思います。以下、常勤講師と魅力化コーディ
ネーターについて補足します。
<常勤講師>
 現在いる10名の常勤講師のうち、一人は定年退職後も母校・隠岐島前高
校で教員を続けている方です。私ともう一人は、働いていた自治体を退職
し、常勤講師の枠で採用されました。あとの7名の方たちは、狭き門と
なっている島根県の教諭の採用試験に残念ながら合格できず、今年度は常
勤講師登録されて、隠岐島前高校に配置となった方たちです。
 前の3名は島前高校を希望していますので、よほどのことがない限りは
この学校での勤務を続けますが、7名の方たちは教諭の採用試験を受けま
すので、合格すれば(新規採用研修の関係もあり)本土の学校へ赴任する
ことになります。不合格だったとしても、特に希望がなければ、本土の学
校を希望して転出されることもあります。更新のある単年度採用なのです
が、隠岐島前高校との関わりが1年で切れることは少なくありません。
 教諭の方たちは、本土出身の方でも、県の異動ルールに基づいて任期4
年でいらっしゃる方がほとんどですので、教諭の方の比率が増えれば、校
内人事は安定しますが、現在のように常勤講師の比率が多いと、いろいろ
な意味で不安定になります。昨年度末から今年度は、教員24名中11名が入
れ替わりました。そういうことが普通に起こりうる学校ということでもあ
ります。
<魅力化コーディネーター>
 本校の魅力化コーディネーター5名は、学校の主要な取り組みである地
域に開かれた学校として、地域と学校をつなぐ存在として活躍するだけで
なく、SGH(スーパーグローバルハイスクール)におけるさまざまな事業を
推進する牽引者でもあり、取り組む生徒さ
んたちを支援する役割をも担っています。特に、教員という立場からでは
なかなか見出せない、生徒さんたちの可能性を引き出すことが、実に上手
だと感じています。

 現在、私の所属する校務分掌「キャリア教育部」にも、コーディネー
ターが分掌会議に一緒に参加し、さまざまな視点からの情報提供や意見発
信をしています。生徒のみならず、教員にとっても彼らの存在は刺激的で
あり、多くの学びを提供してくれています。

 また、総合的学習の時間や地域課題解決をテーマとした学校設定科目な
どでは、コーディネーターが授業進行におけるファシリテーターとしての
役割を担うと共に、授業に向けてのプランニング、授業後のリフレクショ
ンなどを、教員と一緒に取り組んでいます。このような活動を通して、教
員にとっても、これからの教育を考え実践していく上で、とても充実した
研修の場がつくられるようになっていることを実感しています。

(3)カリキュラムの特徴
 SGHになるにさいして、カリキュラムが大幅に変わりました。それ以前
も「魅力化」の下で、それまでの島前高校のカリキュラムを大きく変え、
コース制を導入し、総合的学習の時間や学校設定科目を工夫することで
「地域から学ぶ」魅力的な学校づくりを実践してきました。
 地域から世界へ。ローカルとグローバルという2つの視点を持つ取り組
みのうち、後者の部分をより一層強化するということの大きな柱を、
SGHとしてのさまざまな取り組みを推進することで構築しようとしていま
す。〔参考4〕
 特に着目したいのは、これまでもカリキュラムにもあった「夢探究」
「地域地球学」に加え、新たに設定された「地域生活学」「グローカルヒ
ストリー」「リベラルアーツ」という科目です。科目内容はそれぞれに興
味深いものですが、これらのどの科目にも共通しているのが、複数の教科
科目の教員で授業を受け持つようになっている、というところです。ま
た、地域と関連する科目については、さらに魅力化コーディネーターがこ
れに加わっていきます。
 こうした複数の、多様な立場の教職員によって授業を進めるためには、
授業についての事前・事後の話し合いが不可避です。それを円滑に進める
ために、時間割の中にそれぞれの科目についてのミーティングの時間が確
保されています。

3 変化の背景

 私が着任した当初の隠岐島前高校は、この2年と少しの間に大きく姿を
変えています。カリキュラムの変更は当然ありますが、教員・コーディ
ネーターの顔ぶれだけをみても、現在いる30名のうち、私が着任したとき
からいらっしゃるのは、私を含めて13名だけです。そうやってこの学校は
着々と変化をしていきます。
 廃校寸前から学年2学級校へとなったことを「魅力化」の成功事例とと
らえ、実際に多くの視察や取材があります。でも、海士町の山内道雄町長
がおっしゃっている「海士町は地域創生の成功事例ではなく、挑戦事例で
ある」というお言葉は、そのまま島前高校にも当てはまると感じていま
す。正直に厳しい目で見るほどに、成功事例という実感は持てません。し
かし、間違いなくこれだけの挑戦事例は見たことがありません。
 その背景には、管理職の安定があるのではないかと感じています。
 「新魅力化構想」に中に、次のような指摘があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
 引用ー学校の方針を決定し、魅力ある学校づくりに最も影響力を持つの
は学校の管理職であるが、隠岐島前高校の校長と教頭は、慣例として任期
2年・毎年交互に変わってきた。また、初めて教頭や校長に昇任した方
が、初めての離島へ赴任するケースが多い。そのため、地域や学校、役職
に少し慣れて、「さてこれから」というときに本土へ異動となってしま
う。継続性が重要である教育や学校経営において、このように校長と教頭
が入れ替わっていく状況では、中長期的な視点に立った改革はおろか、安
定的な学校経営や、継続的な地域に根ざした学校づくりも難しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
 私が赴任した平成27年度の校長・教頭は、校長が着任2年目、教頭が1
年目でしたが、お二人ともに、隠岐島前高校に教諭として勤務した経験を
もち、地域を支える中堅年代の方たちが自分の教え子という状況でした。
校長は3年間の任期で、SGHの申請・導入・実施を成し遂げられ、「魅力
化」を進めてきた隠岐島前高校に、さらに新たな流れを構築することに成
功しています。教頭は着任が1年ずれていますので、今年度が3年目で、
前校長と代わって着任された新校長の1年目を支えると共に、ご自身の島
での教諭としての経験を活かし、本土から着任された教員へのアドバイス
や支援を丁寧になさっています。新校長も、前校長の流れをくみながら、
さらに歩みを止めずに進んでいこうという「前傾姿勢」(ご本人談)をお
持ちのかたで、現在進めているさまざまな改革を引き続き推進する体制が
できていると感じています。
 もうひとつの背景として、先に述べた常勤講師の入れ替わりの速さ、が
あるのではないかと感じています。
 当初は、これだけ入れ替わりが激しいと、なかなか新しいことが定着し
ないのではないかという危惧がありました。そのとき「組織が流動的な方
が改革は進みます。固定化した組織で”変化させる”ことは難しいです」
というコーディネーターの言葉は今でも印象に残っています。
 先の「新魅力化構想」の中では、提言として次のような記述がありま
す。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
 引用ー10年後には自ら島前高校への異動希望を出して赴任する管理職や
教職員の数に加え、島前高校の卒業生である教職員の数が増え、教員内に
おける講師率は2割以下、教員の本校への平均赴任年数は4年以上になるよ
う働きかけていく。
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 管理職の人事はわかりかねますが、教職員は実際にご本人から話を伺う
機会などがあります。希望して隠岐島前高校にきました、希望して今年度
も残りました、という方の数は、教職員全体の中で確実に増えてきていま
す。変化の時代である今は、変化のある常勤講師率4割が大きな原動力に
なっているのかもしれませんが、10年後には「新魅力化構想」の提言のよ
うな状況になり、ある種の安定が見られるようになるかもしれません。

4 10年という時間の中で

 最後に、55歳で常勤講師として着任した私のこれからについて述べてみ
ようと思います。
 単年度契約ですが、管理職から「あなたはもういらない」と言われない
限り、私の中では65歳の年限まで取り組んでみようと思っています。そう
いう意味では、私自身の取り組みも10年をひとつのまとまりとして考えて
います。
 現在は、理科の教員として1年次「生物基礎」、2年次「生物基礎探
究」「科学と人間生活」、3年次「科学と人間生活」「地域地球学」を担
当しています。「生物基礎」以外は、課題解決型の授業として、2?4名
の理科教員・コーディネーターと一緒に受け持っていますので、そこには
常に他の方達との議論が不可避です。「生物基礎」は全て私が授業のデザ
インを行っていますが、もう一人の生物教員が可能な限り授業に一緒に参
加してもらっていますので、授業についての対話が頻繁に起こります。
 キャリア教育種担当として「夢探究」「地域生活学(地域)」に関わっ
ています。ここは先にも述べたように、多様な立場の教員・コーディネー
ターが集い、授業についての検討が行われており、私もそこに参加してい
ます。
 これまでの33年間の東京での教員としてのキャリアは、多様な生徒さん
たちへの関わり合いということが大きなテーマでした。俗に言う、進学校
から中堅校、そして生活指導困難校まで、さまざまな学校を意図的に希望
して赴任してきました。また、不登校という課題に直面した生徒さんたち
を集めた学校を作るということを通して、学校とは何か、教室、授業とは
何か、という本質的な部分を考える機会をいただいてきました。
 これらの経験は一個人のものに過ぎませんが、どこかのタイミングで何
かしらの問題解決には役立つかもしれません。自分の経験を押し付けると
いうことではなく、その経験をベースにもった上で、一緒に授業について
考え、さまざまな課題に取り組んでいきたいと考えています。
 その際に大事なことは、リードではなく、伴走するということではない
かなと、最近感じています。そして「問いを立てること」を大切にしてい
ければと思います。明瞭に言語化された「問い」があると、そこに集う多
様な人同士が、協働して思考する、議論することができます。私自身の
「問いを立てる」力を鍛えることで、これからも続く隠岐島前高校の挑戦
に参加し続けていきたいと思います。

〔参考1〕「未来を変えた島の学校」(山内道雄・岩本悠・田中輝美著、
岩波書店、2015年3月24日発刊・偶然ですが、この発刊日に私は島へ移住
しました)
https://www.iwanami.co.jp/book/b262945.html
〔参考2〕「隠岐島前高等学校新魅力化構想」
 http://miryokuka.dozen.ed.jp/news/uploads/
【Web掲載用】隠岐島前高等学校新魅力化構想.pdf
〔参考3〕私の過去の取り組み
https://aplysia.jimdo.com
〔参考4〕平成28年度入学生の教育課程表
http://www.dozen.ed.jp/school-life/uploads/H28年度入学生%E3%80%80
教育課程表.pdf
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 鍋田さんご自身のキャリア形成など、大変興味深い論考でした。それと
ともに興味深かったのは、隠岐島前高校における管理職の方々の、立ち方
や教職員への関わり様でした。
 学校組織において、管理職がどのようなスタンスで立っているかは、教
員が新しい学習内容や方法にチャレンジするために、特別大切なことだと
考えています。教師の成長を、管理職はどんな形で支えていけばいいのだ
ろうか、実はとても重要な視点ではないか、と改めて感じました。

 次号は、8月6日日曜日。岡崎勝さん(名古屋市立小学校非常勤講師/
学校マガジン『おそい・はやい・ひくい・たかい』(ジャパンマシニス
ト編集人)さんです。広島原爆投下の朝に配信したいと考えています。
徹底した現状分析と批判を長きにわたって続けてこられた方です、大変楽
しみです。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
11号(読者数2385)2017年8月4日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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教師教育メールマガジン10号、阿部隆幸さんです! - 2017.08.02 Wed

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メールマガジン「教師教育を考える会」10号
          2017年8月1日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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教職大学院で授業づくりに関わるということ
上越教育大学教職大学院准教授/NPO法人授業づくりネットワーク
副理事長                      阿部 隆幸
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第10号は、阿部隆幸さん。現場教員として、たくさんの実践書籍を発
表してきた阿部さんが、教職大学院のスタッフに転身して2年目に入りま
した。教職大学院で阿部さんが感じていること、考えていることを書いて
いただきました。                   (石川 晋)
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1 「教職大学院」を通して教師教育に携わるということ

 わたしは、27年間の小学校教員生活を経て、平成28年4月から「高度専
門職業人育成としての教員養成に特化した」教職大学院の一つである、上
越教育大学教職大学院のスタッフの一人として関わっております。まだ2
年目なので本質的なところまで理解できていない恐れがありますが、わた
し自身が今現在推し進めていること、感じていることを文字にすることを
通して、教職大学院を通して見る教師教育について少しでも紹介できれば
嬉しく思っています。

2 「多様化」の中の「専門性」。これらをつなぐのは「協働性」

(1) 教職大学院創設の背景(学校教育課題の複雑化・多様化)
 教職大学院は平成20年度に(上越教育大学教職大学院を含めた)19大学
でスタートしました。国が教職大学院設置を推進しているため、平成29年
度には新たに8大学設置されて合計53大学となり、ほぼ全ての都道府県に
設置されたことになります。

 平成20年度以前にも教育系大学院(つまり修士課程)が存在しました
が、なぜ教職大学院設置の必要性があったのでしょうか。それは、「学力
低下、いじめ、不登校、学校の小規模化、家庭や地域の教育力低下、発達
障害の子どもの増加」など学校教育の課題の複雑化・多様化にあります。
これらに対応するための高度な専門性と実践力を身につけたリーダー的な
教員の存在が不可欠となり、そのような教員を養成するために教職大学院
は創設されました。

(2) 教職大学院の主な目的・機能(入学する学生の多様性)
 教職大学院は大きく2つの目的・機能があり、その結果、入学してくる
学生が方向付けられます。

 一つは、学部段階での資質能力を修得したものの中から、さらにより実
践的な指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る
新人教員の養成です。これは学部卒業生を対象としています。

 二つは、現職教員を対象に、地域や学校における指導的役割を果たし得
る教員等として不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えた
スクールリーダー(中核的中堅教員)の養成です。これは現場を数年経験
している現職教員を対象としています。

 おおざっぱな類型になりますが、これから現場を経験する学生(学卒院
生)と相当数現場を経験してきた学生(現職院生)がおり、現職院生の中
にも授業づくりや学級づくりをより深く学びたいと考える人と管理職を想
定して学びにくる人とが混在しています。

 ここでは、学生の立場、目的の複雑化・多様化と挙げておきます。

(3) 教職大学院の特色(学ぶ内容の多様性)
 教職大学院は、これまでの教育系大学院(修士課程)と比較して次のよ
うな特色をもつと言います。

i)理論と実践を融合した教育内容・方法であること。
ii)事例研究、模擬授業、授業観察、ロールプレーイング、フィールドワ
ーク、双方向的・多方向的なディスカッションなど、実践的な指導法を用
いること。そのために4割以上の実務家教員が必置とされていること。
iii)教育分野の高度専門職業人の養成に特化しているので、研究指導や修
士論文は課されないこと。
iV)大学院の運営全般においてデマンドサイド(学校、教育委員会等)と
連携すること。
V)組織的なFDや外部評価、第三者評価など、普段の検証・改善システム
を構築すること。

 現場に役立つことが第一なので、修士論文は課せられませんが、各自治
体に設置されている「教育センター」等で学べる内容とは差別化を図らね
ばなりません。その意味で「理論と実践を融合した教育内容・方法であ
る」ことが特に求められます。

 教職大学院の「創設の背景」「主な目的・機能」「特色」だけでも、
様々な矢印の方向を向いていることが分かります。多様であり、複雑で
す。この状態をどのようにして乗り越えた学びとしていけばよいのでしょ
うか。
 今のところ、個別化と協同化・協働化の往来としての学びと考えて
います。

 上越教育大学教職大学院は、入学定員が60名です。M1とM2を合わせると
120名。これは、全国の教職大学院からすると大人数の部類に入ります。
たくさんいるからこそ、多様性を生かした協同化・協働化が展開できま
す。

3 本学教職大学院の最大の特徴「学校支援プロジェクト」

 現場を重視する教職大学院では、従来の教育系大学院(修士課程)と異
なり、カリキュラムに「学校における実習(10単位以上)」を設けていま
す。
(「教職大学院:カリキュラムのイメージ<文部科学省>」)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kyoushoku/kyoushoku/1354467.htm
 学生人数の少ない教職大学院であれば、現職院生であれば所属校(派遣
校)での実習や学卒院生であれば附属学校での実習になるところでしょ
う。

 しかし、本学教職大学院は違います。もともと地元に根付いた大学であ
ること、学生人数が多い教職大学院であることから、各研究室ごとに3?
5人のチームを組んで上越市・妙高市・糸魚川市を中心とした各小中高等
学校と連携(連携協力校といいます)した実習(1年で150時間)を行って
います。学校支援プロジェクト
http://www.juen.ac.jp/kj/learning/project.html
と呼んでいます。

 研究室の研究テーマと手を挙げてくださった連携協力校の学校課題とを
照合し、お互いにWin-Winの関係になるように目指して実習をしていくの
です。院生は、その際、「チームの計画書」と「個別計画書」の2を作成
し実習に取り組むことになります。「個別化と協同化・協働化の往来」で
す。

4 個別化と協同化・協働化の往来としてのゼミ(研究室)の存在

 複雑化、多様化が進むと同時に「個別化と協同化・協働化の往来」を確
固たるものとするためには研究室(ゼミ)の存在がとても大切になりま
す。アドバイザーの大学教員と一対一だけで自分だけの課題を黙々と追求
していくことは不可能です。研究室仲間で共通のOSを獲得し、そこに自分
なりのアプリケーションを乗せていくという感じでしょうか。もちろん、
同じアプリケーションだとしてもその使用法は様々です。

 例えば、わたしは今年度から院生を担当することができるようになり、
5名の院生がわたしの研究室に所属してくれ、チームを2つ設けることが
できました。そこに「目標と学習と評価の一体化」「協同的な学び」「授
業を通した学級づくり」「ホワイトボードを活用した信頼関係をもととし
た授業づくり、学級づくり」という学校課題を挙げてきた連携協力校2校
と学校支援プロジェクトを進めて行くことになりました。

 実際に実習に入るのは9月ですが、これが決まってから学生の動きが今
まで以上に活発になりました。

 「目標と学習と評価の一体化への深い理解への取り組み」「プロジェク
トアドベンチャーの理論と実際」「ホワイトボード・ミーティング技術を
くり返し習得する練習」「目標と学習と評価の一体化を意識した模擬授
業」……。

 互いに、授業づくり、学級づくりの考え方と技術について情報を交換し
ながら、その都度自分の興味関心のあることを立候補形式で決めてどんど
ん進めていきます。発表する人間が、調べてから皆に話すので一番得をす
るという考えが次第に広がり、「次、わたしがやります」という言葉が普
通にでます。その後、主にホワイトボードを使ったふり返りをするという
サイクルを展開しています。

 現職院生が当たり前と考えている振る舞いを学卒院生がどうして?と素
朴に疑問として出したり、現職院生のプロフェッショナルな振る舞いに学
卒院生がなるほどと目を丸くしたり、教室前面で子どもたちに語るときの
立ち居振る舞いにそれぞれの育ってきた環境の違いが反映されたりとそれ
ぞれの学びがあります。

 これらを成り立たせているのは「互いを尊重して話を聴くという態度」
です。
 わたし自身、現場に立っていたことがある人間なので、大学教員という
地位を利用して余計なことを上から目線で語りたくなる自分がいます。そ
こをグッとおさえて、「互いを尊重して話を聴くという態度」が発揮でき
る環境設定に努めています。

5 おわりに

 繰り返しますが、大学教員として2年目ですが、院生と共に学校支援プ
ロジェクトを進めていくのは今年が初めてのわたしです。これまで語って
きたことは現在進行形であり、ちょっとした理想も入っているかもしれま
せん。

 しかし、日本全体が大きな変革を求められており、学校教育も同様で
す。そんな中、教職大学院に大きな期待が寄せられています。今までの教
員養成大学ではなかななかできなかった教育の形を教職大学院というとこ
ろで成形していくことが楽しみです。

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 阿部さんとのかかわりもずいぶん長くなりました。実践者としての阿部
さんは謙虚で内省的です。大学院のスタッフになってもそのたたずまいは
変わりません。教職大学院のカリキュラムや内容は、まだ現場の教員に十
分に伝わっているとは言えない状況です。学校ごとの特徴(違い)もあま
り意識されていません。教職大学院スタッフとしての模索もよくわかり、
興味深く読ませていただきました。
 この新しい仕組みが、日本の教職員の学びにどのように役立っていくの
か。現場の教員の積極的な提案との往還が成立していくのか。教師の学び
のライフコースの地殻変動を起こす力になるのか。私も期待と不安をもっ
て注目しています。
 阿部隆幸さんの新刊は、「『学び合い』×ファシリテーションで主体
的・対話的な子どもを育てる!」(学事出版)。ちょんせいこさんとの共
著です。まだ店頭に並びませんが、『学び合い』フォーラムで先行販売と
お聞きしています。  https://manabiai.jimdo.com/

 次号は、8月4日金曜日。鍋田修身さん(島根県立隠岐島前高等学校常
勤講師)です。教師の越境する学びが注目を集める中、まさにそれを現在
進行形で体現している方の一人です。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
10号(読者数2385)2017年8月1日発行
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教師教育メールマガジン9号、藤原友和さんです! - 2017.07.29 Sat

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メールマガジン「教師教育を考える会」9号
         2017年7月28日発行
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見て学ぶ・聞いて学ぶ・描いて学ぶ・読み解いて学ぶ
~授業づくりの「発想」と、授業の「構造」を描き、振り返ること~

藤原友和(函館市立万年橋小学校教諭)
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第9号は、藤原友和さん。学校教育におけるファシリテーション・グラ
フィック活用の第一人者です。小学校と中学校の両方の勤務経験もお持ち
です。                        (石川 晋)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1 「熟達者と初心者の違い」という視点から

 知識は大量に記憶しているだけでは有効に活用することはできません。
互いに結びつけることによって生きて働かせることができる、という議論
があります。

----------- 引用開始 -----------

 ある領域の熟達者(略)と初心者の最大の違いは何でしょうか? この
問題を調べた数多くの研究からわかったことは、その違いが、熟達者の汎
用的な思考や記憶の能力・スキルではなく、専門領域の問題をうまく解く
ことができる「『概念や原理』に基づいて構造化された豊富な知識」つま
り「質の高い知識」にあるということでした。

   国立教育政策研究所編『資質・能力[理論編]』(東洋館出版社)

----------- 引用終了 -----------

 知識の量そのものが問題なのではなく、「概念や原理に基づ」く、「構
造化された」「豊富な」知識を熟達者は身につけているということですか
ら、いくら大量に教育書を読んでいても、頻繁に教育系のセミナーに参加
していても、それだけでは授業がよくなるということは──やらないより
はマシかもしれませんが──期待できない、ということになります。

2 これまでの「授業をよくする試み」は言葉でなされていた

 だから、教育書を読んだり、セミナーに参加したりすることに加えて、
実践記録をとって仲間と読み合ったり、模擬授業をして批判し合ったり、
時には先輩教師からコメントをもらったりしながら、知識の「量」だけで
はなく「質」も高めようという努力をする文化がありました。

 これらの「授業をよくしようとする努力」は、その多くが「言葉」でな
されています。もちろん、音声や映像で授業を振り返り力量形成につなげ
るといったことも試みられていますが、それらは個人的な努力として行わ
れる場合が多いのではないでしょうか。唯一、「ストップモーション式授
業検討」が、複数のメンバーで動画を撮影し、再生しながら授業を検討す
るという、協働的な手法として提案されています。そのような例外を除い
て、多くは音声言語にせよ、文字言語にせよ、「言葉」を介して行われて
います。

3 「見える化」「図示化」を伴う手法を取り入れる

 先輩教師から後輩教師へ「言葉による伝達」を行うことは、今後もスタ
ンダードであることに変わりは無いと思います。やはり言葉は最大のコミ
ュニケーション・ツールです。

 しかし、言葉だけでは伝わりにくいものや、言葉だけで伝えようとする
と複雑すぎたり難しくなったりしてしまうものもあります。

 そうしたときに、絵や図、言葉によるやりとりを構造化して描き出した
ものを媒介にして、先輩教師と後輩教師が授業について語り合うという方
法が有効な場面もあるのではないでしょうか。伝達だけで終わるのではな
く、「伝達し、構造化のモデルを示す」ところまでを視野に入れようとい
う発想です。

 いわゆる「ファシリテーション・グラフィック」を取り入れた方法です。
2016年11月22日、放課後の教室で模擬授業検討会を行いました。その
ときの記録をblogに残してありますので、ご覧下さい。

 http://wingsesta.exblog.jp/27015151/

 本文には次のように書いています。

----------- 引用開始 -----------

 時間は17:30~19:00という90分間だった。

【事前準備】
 ・参加者には、教科書を持ってきてもらう。
 ・管理職に校舎使用の許可を得る。
 ・イーゼルと、WritingPadを設置する。


【進め方】
 1 ミニ講座「物語の構造分析」(藤原/15分)
 2 ミニ演習「持ち寄り教材の教材分析~境界線を探す~」
       (藤原/15分)
 3 模擬授業「雪渡り」(グラフィッカー:八重樫/20分)
 4 模擬授業「おにたのぼうし」(グラフィッカー:鈴木/20分)
 5 ミニ講座「FGレコーディングの技術」(藤原/10分)
 6 模擬授業「健康と清潔な体」(グラフィッカー:小辻/10分)


 僕が経験年数17年。他の3人は全員2年目。
「これから若手が学校で扱う教材を使った」
「藤原の模擬授業を」
「若手がグラフィックし」
「終わったあとに全員で」
「FGみながらふりかえりを行う」

 この流れの中に、参加者それぞれの有益さがあり、更にBRUSHUPし
て学習可能性を高める持ち方ができるのではないかと感じている。

----------- 引用終了 -----------

 具体的に、なぜこの手法が、「絵や図、言葉によるやりとりを構造化し
て描き出したものを媒介にして、先輩教師と後輩教師が授業について語り
合うという方法が有効な場面」たり得るのか、拙い分析を別の日のblog
本文には書いていますので、ご覧いただけましたら幸いです。

http://wingsesta.exblog.jp/27034218/

4 取り入れている人は増えてきている?

 初任者指導講師として、研修会に参加する若手にFGを描かせたり、授
業をFGで記録して若手にフィードバックをしたりといったことをされて
いる先生が知り合いに何人かいます。

 おそらく、若手の描きぶりによって「理解の度合いをたしかめながら」
指導することや、視覚的な理解の方を得意とする世代への効果などを考え
てそうすることを選ばれているのではないかと思います。

 「自分のための記録」と「他者へのフォードバック」を同時進行で行う
ことも可能な、「ファシリテーション・グラフィックによる授業づくりの
学び方」。そこに可能性を感じて、いろいろと試みています。いつかまと
まった形になりましたら、またご報告いたします。
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 ファシリテーション・グラフィックは、議論を描きながら場のファシリ
テーションを図っていく形態、あるいは議論の記録(レコーディング)に
重きを置く形態、など様々なパターンがあります。いずれにしても、これ
まで言語情報だけが飛び交うことが多かった研修の場に動的なグラフィッ
クが導入されることには画期的な価値がありました。それを、学校教育現
場でいち早く、授業や教員研修に活用してきた第一人者が藤原さんです。
 教師教育ということに焦点化すれば、おおむね言語情報に強みを発揮す
るタイプの教員だけが、活躍する場面が、これまでは多かったことは否め
ません。しかし、公の研修会、民間の研修会、そして校内の研修会など、
あらゆる学校教育に関わる研修の中に、ファシリテーショングラフィック
の手法が導入されることで、これまでは特性を生かし切れていなかった教
員にしばしばスポットが当たるようになってきています。藤原さんの提案
の意義は極めて大きかったと考えられます。
 藤原さんの主著は『教師が変わる!授業が変わる!「ファシリテーショ
ン・グラフィック」入門』(明治図書,2011)。藤原さん自体は、この本
の問題提起の場所から、さらにずうっと先へと足取りを進めているとはい
え、ぜひ一読をお勧めする一冊です。

 次号は、8月2日火曜日。阿部隆幸さん(上越教育大学教職大学院准教
授/NPO法人 授業づくりネットワーク副理事長)の登場です。社会科授
業、そして『学び合い』の有力な実践提案者として注目を浴びる実践的研
究者です。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
9号(読者数2377)2017年7月28日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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教師教育メールマガジン8号、木下通子さんです! - 2017.07.25 Tue

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メールマガジン「教師教育を考える会」8号
                     2017年7月25日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 「読書」視点から、教師に必要な力を考える
      埼玉県立春日部女子高校司書/ビブリオバトル普及委員
                            木下 通子

http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第8号は、木下通子さん。埼玉の高等学校の司書として、全国の学校図
書館から注目を集める図書館づくり・運営をしてきた方です。学校図書館
の司書という視点から、教師教育への提言をお願いしました。
                           (石川 晋)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1 いよいよ夏休みですね!
 先生方はお忙しい一学期をお過ごしだったことと思います。
 夏休みは少しお休みできますか?
 私は学校司書。専任で専門(司書資格)の職員として、埼玉県の高校図
書館に勤務しています。勤務時間も先生方と同じで、一日中図書館で仕事
をすることができます。司書のいる学校図書館は、いつでも開いていて、
休み時間でも授業中でも図書館を利用することができます。
 私の勤務している県立春日部女子高校は、中堅の進学校です。女子高校
ということもあり、小さい時には本を読むのが好きだったという生徒が多
いです。しかし、小学校高学年、中学生になると、本を読めないという子
が増えてきます。勉強が忙しくて時間が無くなるそうです。小学校や中学
校に本のことを良く知っていて、生徒の様子がわかっている司書がいれ
ば、時間がない生徒にも上手にアプローチして、読書への動機づけができ
るでしょう。が、残念ながら日本の大半の小中学校には、学校司書が配置
されていません。だから、入学してきた生徒に様子を聞くと、高校に入っ
て初めて司書と出会ったという人が多いです。学校図書館は、本と人とを
結びつける場です。この場をお借りして、司書が学校図書館でどんな仕事
をしているか、少しご紹介させてください。

2 学校司書の仕事
 この原稿を書いているいまは夏休み前で、とてもあわただしいです。各
教科から夏休みの宿題が出る時期でもあります。問題集をやってくる。な
どの宿題だと、図書館に生徒が来る確率はほとんどありませんが、定番の
読書感想文や、「新書」を1冊読むとか、「〇〇に関する本を読んで自分
の考えを書きなさい」という課題が出ると、生徒は図書館に来ればなんと
かなるだろうと思って、本を探しに来ます。本のことは図書館へという信
頼関係ができているからです。生徒たちは図書館に来ると、「どの本が読
みやすい?」とか、「興味があることがないけれど、どんな本を読んだら
いいかな」など、それぞれの要求をぶつけてきます。先生から予告されて
いる課題なら、準備ができますが、生徒から課題があることを聞いて、あ
わてて先生に課題プリントをもらいに行くなんていうこともしょっちゅう
です。
 夏休みの宿題にあたりをつけることも重要で、そのためにも私は日ごろ
から先生方とコミュニケーションを取るように心がけています。日常的に
交流があって、情報交換できていて、図書館を利用してくれている先生
は、課題を出す前に、司書に相談をしてくれます。「こういう課題を出そ
うと思うのだけれど、本が揃えられるかな?」とか、「課題でこういう力
をつけさせたいんだけれどどう思う?」という突っ込んだ相談をしてくだ
さる場合もあります。これは、司書が本の専門家で、本についてくわしい
ということを、先生がわかってくれているからです。
 それから私はいつも、カウンターで仕事をしています。図書館に入って
来た人に、「こんにちは!」とあいさつをして、なんでも聞いてもらいや
すい雰囲気を作るためです。カウンターはただ、貸出・返却をする場では
ありません。返却された本の感想を共有したり、借りていかれる本につい
て話をして、別の興味に発展させたり、図書館の中心の場所と言えます。
学校図書館も公共図書館と同じように、レファレンスサービスをしていま
す。レファレンスサービスとは、利用者の質問に答えて、利用者が求める
資料を見つけるサービスです。先生方からは、「この授業に関連する資料
を探して」と頼まれることもあります。この資料をと、書名が上がる場合
は簡単ですが、ばくぜんとした内容で本探しを頼まれると、こちらがアン
テナを張り巡らせて、関連する資料を多岐にわたって用意します。用意し
た資料を全部使っていただく必要はなく、その中から使えそうな資料を選
んでいただく。それで、先生に「資料をそろえてもらったので、中身の濃
い授業ができた」と言われるのが、天にも昇るような喜びです。
 図書館の根幹は、蔵書です。本棚を歩いていると、本が「私を読んで
ー」と声をかけてくれるような棚づくりを目指しています。そのために
は、選書がとても重要です。生徒や先生方のニーズにあった本を購入する
のはもちろん、その年代の子どもに読んでもらいたい本、授業に必要な本
を計画的に購入していきます。図書館に司書がいない学校では、本の購入
は学期に一回と聞いたことがありますが、私たち、司書がいる学校図書館
では、収集方針を立て、司書の裁量で本を発注することができるため、リ
クエストの本や必要だと思う新刊は、随時発注しています。とくに新刊は
本屋さんに負けない品ぞろえを目指しています。 埼玉県の高校図書館に
は、40年くらい前から専任で司書資格を持った学校司書が配置されていま
す。蔵書も3万冊くらいが平均で、学校図書館に必要な百科事典や図鑑な
どの基本図書はそろっています。そんなベースがあるので、新刊図書を買
いやすいのです。ベストセラーはもちろん、実用書などもそろえていま
す。
 私は先生方と同じように、職員会議にも出ています。そのおかげで、生
徒の状況も把握できています。体調が悪い生徒を保健室に連れていくよう
に、情報を求めている生徒を担任の先生が図書館に連れて来てくれるケー
スもあります。

3 本を「読む」ことに寄り添うために
 大人は字が読めれば、本が読めると思ってしまいがちですが、本を読め
ることと字が読めることは違います。走ることができるのとマラソンが走
れるのとは違うように、本を読むのが苦手な人には、本を読む練習をする
ことが必要です。読書とスポーツは似ています。
 最近は本が一冊もない、新聞も購読していないというお家が増えてきた
ようです。
 共働きの家庭が増えて、お母さんも忙しいので、子どもにご飯を食べさ
せるのに精いっぱい。小さい時からゲームにお守をしてもらって育ってい
る子どもも多いですよね。
 それでも、保育園や幼稚園に通っている間は、折りに触れて大人に本を
読んでもらう機会があります。ところが小学校に入ると、読み聞かせをし
てもらう時間も減って、本は自分で読むもの、もう大きいんだから自分で
読みなさいと言われることが増えてきます。
 授業で読む読書は、学びのため。知識を得るための読書です。しかし、
読書には楽しみのための読書もあります。学校図書館は、学びのための読
書と楽しみのための読書の両方を支える場なのです。たとえば、ポケモン
にハマっている子どものために、学校図書館でポケモン図鑑を買ってもい
いでしょう。次の興味につないでいける大人が上手にうながせば、ポケモ
ンをきっかけに、子どもの興味が広がって行くこともあるでしょう。
 昔は、子どもにとって読書は娯楽でした。
 でも、今の子どもたちにとって、読書は娯楽ではなくなりました。本を
読むのがめんどうくさいという子どもも増えてきました。そんな子に本を
読んであげたり、その子が読んでいる本の話を聞いていっしょに共感した
り、感想をいいあったり、次の本を薦めたりできる大人がいれば、子ども
の読みの幅が広がって行くと思います。○年生だから、これくらい読みな
さいではなくて、なんでそれが好きなの?それが好きならこれも読んでみ
たら?と子どもの読むことに寄り添うことが学校司書の仕事です。本を読
むのには、根気が必要です。本は○○しながらでは、読めません。読む人
に、読む意志がないとできないアクティブな活動なのです。
 読書の技法はいろいろあります。本を読むのが苦手な子でも気軽に参加
できて、生徒と本を結ぶ楽しい方法はないかしら?と考えていたところ、
ビブリオバトルと出会いました。
 ビブリオバトルは「人を通して本を知る・本を通して人を知る」をキ
ャッチフレーズにした書評ゲームです。
 ルールはとてもシンプルで簡単。
1 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2 順番に一人五分間で本を紹介する。
3 それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッショ
  ンを2~3分行う。
4 すべての発表の後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とし
  た投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを『チャンプ
  本』とする。
 シンプルで簡単だからこそ、学校だとどうやったらいいか戸惑ってしま
うこともあり、最初は試行錯誤しましたが、現在は定期的に学年全体や図
書委員の生徒といっしょにビブリオバトルを楽しんでいます。ビブリオバ
トルの実践の詳細については、岩波ジュニア新書に書かせていただきまし
た。
 『読みたい心に火をつけろ!』 木下通子/著 岩波ジュニア新書。よ
かったら、お読みください。

4 夏休みには本を読もう
 先生方は本を読んでいますか?
 もちろん、授業に関する本は読んでいらっしゃるでしょう。
 でも、楽しみの読書はされていますか?
 せっかくの夏休みです。本を読んでみませんか?
 もちろん、お好きな本を読むのもいいでしょう。でも、ちょっと趣向を
かえて、子どもの本を読んでみるのはいかがですか?
 子ども同士でいじめやケンカが起こった時。正論を言って子どもを諭す
よりも、一冊の本を読み聞かせすることで、心に響くことがあります。本
が伝えたいことを助けて伝えてくれるからです。
 子ども向きの本のブックガイドもたくさん出ています。そういうものを
参考にして、ご自分の学校図書館や、公共図書館の児童室、書店の子ども
の本コーナーをながめてみてください。学校図書館に司書がいなくても、
公共図書館には子どもの本を専門に勉強している司書がいます。こんな内
容の本を探しています、どこにありますか?と声をかけてもらえたら、公
共図書館の司書も必ず本を紹介してくれます。
 いま、私は子どもの貧困や家庭でのネグレクトがとても気になっていま
す。親が病気になると、親の病気を自分のせいだと思ってしまう子どもも
います。親がアルコール依存症やうつ病になった子どもに、親の病気を伝
えるための絵本も出ています。『家族のこころの病気を子どもに伝える絵
本』(ゆまに書房)というシリーズも、保健室や学校図書館で活用されて
いる本です。
 私が子どもの頃から、貧しいお家はありました。保護者がかまってくれ
ないお家もありました。私自身も母子家庭に育ったので、本が友だちでし
た。本の主人公といっしょに、別の国を旅したり、おいしいものを食べて
いるところを想像したり、本を読んでいる時には別の世界を旅して、心の
幅を広げていました。
 たとえば、1999年に出版された『ストライプ たいへん!しまもように
なっちゃった』 ディビッド・シャノン/文と絵 清水奈緒子/訳 セー
ラー出版 は、高校生にも読み聞かせをしている絵本です。
 主人公のカミラは、リマ豆が大好きですが、学校のみんながリマ豆が大
嫌いなので、ぜったいに食べようとしません。カミラはいつも人の目ばか
り気にしていて、みんなと同じにしていたいと思う女の子でした。そんな
カミラは、新学期になにを着ていこうか悩みます。どんなかっこうでいっ
たらいいのかしら?みんな、わたしをどう思うかしら?
 そう考えていると、カミラの身体が色とりどりのしまもようになってし
まいます。
 カミラはもちろん、学校を休みます。そして、やってきたお医者さん
は、しまもようが消えるようにと軟膏を出して帰って行きました。次の
日、カミラは、しまもようの身体のまま、学校に行きます。クラスの友だ
ちはカミラを見て大笑い。カミラをからかいました。友だちが好き勝手に
色や形を言うと、カミラの身体の模様は言われたとおりに形を変えていき
ました。お母さんやお父さんはとても心配して、いろんな専門家を頼みま
す。しかし、カミラのしまもよう病はぜんぜん治る気配がなく…。
 この絵本は絵本にしては文章が長く、一冊読むのに5分以上かかりま
す。小学校だと、高学年からがおススメです。絵がとてもはっきりしてい
て、カミラのまわりの大人の様子がこっけいで、どんどんお話の世界に引
き込まれます。最終的にカミラのしまもよう病は治り、自分を取り戻すの
ですが、病気が治ったきっかけがとてもステキな絵本です。
 進路を決められない高校生にもこの絵本はとても響くようで、紹介する
と自分で読みたいからと借りていく生徒もいます。
 
5 学校図書館に司書がいたら
 2015年に学校図書館法が改正され、「学校司書」という名称ができまし
た。いままでは司書教諭の先生一人の肩にかかっていた学校図書館運営
を、学校司書という専門職がいっしょに担えるようになりました。でも、
「学校司書」は国の配置義務があるのではなく、自治体独自で採用をして
いるため、置かれていない自治体もあるし、小規模自治体の採用では、採
用があったとしても短時間勤務で資格も問われていないケースが多いので
す。
 小・中学校図書館に司書を!という願いが、本を大切に思っている大人
の共通の願いです。そんな願いを後押ししたいと、学校司書の仕事をまと
めた本を書きました。このメールマガジンを読んで、学校図書館の活動
や、司書の仕事に興味を持ってくださった先生に、あわせて読んでいただ
けるとうれしいです。
 生きていくには、想像力が必要です。だから子どもたちには、想像力を
養う機会をもってもらいたい。また、困難な課題にぶつかっても、それを
乗り越えていく力をつけてもらいたいと思っています。その力をつけるた
めには、「本」が役に立ちます。
 先生方のお仕事も、本が助けてくれます。もちろん、教育関係の実用書
を読むことも大切です。でも、ちょっと笑える小説や、ワクワクドキドキ
するミステリーで、心を別の場所に連れて行ってあげるのも、夏休みだか
らこそできること。
 この夏休み、先生方にとって、ステキな本との出会いがありますよう
に!

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 私が長く勤務してきた北海道は、恵庭市などごく一部の例外を除いて、
小中学校の図書館には人がいませんでした。私は28年の勤務期間の中で
残念ながら自分が勤務する学校の図書館に専任の人がいたことがないので
す。そのことは、各教科の学習を進めていくうえでも、子どもたちの読書
環境整備においても、圧倒的な不利益を生じることである、と木下さんの
論考を読みながら実感します。
 そしてもう一つ、やはり私が思っていた通り、それは学校教員の成長に
おいても大きな不利益を生じるものであるようです。
 今春まで勤務していた学校で、一冊の本を自分の力で読み終える経験を
持たずに義務教育を終えていく子どもたちの存在を意識しました。それは
一定程度の学力層の子どもたちにも及んでおり、彼らがそのような状況で
例えば教員を志していくことも、十分に想定されると感じていました。事
実、近年、読書の体験がほぼない、したがって、自力で一冊の本を読むこ
とが難しい状況で教壇に上がる教員が散見されるようになっています。
 ネットが隆盛を極める今日においても、書籍を読むことから学べるとい
うことは、とても重要な力であると考えています。学校図書館司書が、木
下さんのように、校内的な影響力を発揮しながら、授業づくりや教室づく
りにも書籍を通して寄与していけることは、教員が育っていく上でもとて
も重要と考えます。
 木下さんの新刊は、『読みたい心に火をつけろ! 学校図書館大活用術
』(岩波ジュニア新書,2017)。夏の読書におすすめです。また、中高生
にぜひ勧めていただきたい一冊です。

 次号は、7月28日金。藤原友和さん(函館市立万年橋小学校教諭)で
す。学校教育の世界におけるファシリテーショングラフィック活用に先鞭
をつけた注目の実践家です。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
8号(読者数2374)2017年7月25日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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(まぐまぐ:教師教育を考える会)
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石川晋

Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
https://www.facebook.com/profile.php?id=100000528475920
ぼくにできそうなことは、どんどんお受けしますので、遠慮なくお知らせください。FBのメッセンジャーが一番確実です!

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