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2017-10

教師教育メールマガジン26号、渡辺光輝さんです! - 2017.09.20 Wed

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メールマガジン「教師教育を考える会」26号
         2017年9月20日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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国立大附属学校の教師教育の現場から
~お茶中の教師は校内研究でどう学んでいるか?
 教育実習生は何に悩み、どう成長するか?~
       お茶の水女子大学附属中学校 教諭
                     渡辺 光輝
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第26号は、お茶の水女子大附属中学校の渡辺光輝さんです。先進的な校内研修の一端を紹介していただくだけでなく、数年前から取り組んでおられる教育実習生の指導という、教師教育における非常に重要な課題について現場の様子をレポートしてくださっています。長文です。じっくりお読みください。  
                     (石川 晋)
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0 ごあいさつ
 こんにちは。お茶の水女子大学附属中学校の渡辺光輝と申します。
 私からは、国立大附属学校の授業研究と教育実習についてお話をしたいと思います。
 最初に自己紹介を。
 私はずっと中学校で国語を教えている教師です。
 最初の10年間は千葉県の公立中学校で、その後、人事交流で千葉大附属中で5年間。そして千葉県の教員を退職し、現在の中学校に着任して3年目となります。
 「教師教育」についてはとても興味があるのですが、専門的に勉強をしているわけではありません。「教師教育を語るおまえは、そもそも『教師』としてどうなんだ?」と言われると、はなはだ自信がありません。だから、これぞ「教師教育」だ! というのは無理そうですので、私の身近な経験から、こういうふうに教師は学んでいく、こうして実習生は成長していくのでは、というあたりのお話ができればと思っております。
 内容は次の通りです。
 一つ一つが結構長いです。
 興味を持ったところだけでも読んでいただけるとうれしいです。
内容
1 お茶中の教師は校内研究でどう学んでいるか?
(1)月一回の研究授業の時間を捻出する
(2)研究授業では学習者を見る
(3)教科を越境するテーマで教科の壁を超える
(4)「授業リフレクション」で公開研究会の改革に切り込む
2 教育実習生は何に悩み、どう成長するのか?
(1)「どうして……しないの?」
(2)「……はしたくないんです」
(3)「教師が教える時間」から「子どもが学ぶ時間」へ
(4)「全体」と「個」とのジレンマに直面する
(5)子どもから学び、リデザインしていく、二つの指導法
1 お茶中の教師は校内研究でどう学んでいるか?
 まず、勤務校の授業研究についてお話します。
 本校は研究校ということもあり、校内研究は学校の大きな柱となっています。
 多忙な教育現場では、無意味で形式的な校内研究が批判されることも多多ありますが。うちでは、少しでもその校内研究が実のあるものになるように工夫してきました。
 研究内容の詳細については長くなるので割愛しますが、具体的な校内研究の運用について、ここでご紹介します。
(1)月一回の授業研究の時間を捻出する
 4月などの繁忙期以外は、毎月第一火曜日に研究授業をやることになっています。
 その日は授業を50分から40分に短縮し、浮いた時間で、7時間目に研究授業をします。
 7時間目には授業をするクラス以外の生徒は下校となり、全職員でそのクラスの授業を見ます。
(2)研究授業では学習者を見る
 研究授業では、観察する生徒が指定されます。
 例えば、A班の4人の生徒は〇〇先生が見るというように、事前に観察する生徒を複数の職員で分担します。
 つまり、授業をやっている間、参観者は指定されたグループの生徒を責任を持ってじっくり観察することになります。
 普段授業をみるとき、参観者は「気になる生徒」や「気になる様子」だけをピックアップしてみるような見方になりがちなのではないでしょうか。しかし観察する生徒が指定されますと、そういうわけにはいきません。上の空だったり、一見ぼーっとしていたりする、ほとんど注意を引かないような生徒の姿にも、どんな意味があるかを考えることになります。授業の一連の流れの中での、特定の学習者の反応や思考を、参観者は考えながら見ることになります。
 授業後は、同じグループを観察していた教員が集まって、お互い気づいたことを言い合います。
 同じ生徒を観察していた人同士の振り返りですので、「〇〇ちゃんはこうしていたけど、それは〇〇くんのこういう働きかけや、教師のこういう支援が良かったからだ」など、具体的な気づきが共有されることになります。同じ生徒を見ているけど、他の先生と見るポイントが違うことがあるのも興味深いところです。
 このように、クラス全体をなんとなく見るよりは、一人の生徒をしっかりと観察し、それを他の教員と共有した方が、その授業のよしあしが浮かび上がってくると実感しています。
(3)教科を越境するテーマで教科の壁を超える
 中学校の校内研究の最大のハードルが「教科」という壁だと思います。
 研究授業をしても「私は数学科だから、国語の授業を見ても分からない」とコメントされたら一歩も前に進めません。
 だから、校内研究では教科の授業を取り上げることもありますが、その場合は教科の授業内容について検討するのではなく「思考を可視化するツールの活用」などのような教科を超えたテーマを取り上げてディスカッションします。
 また、最近は教科ではなく総合的な学習の時間を取り上げて研究しています。
 いま学校全体で取り組んでいるテーマが「コミュニケーション・デザイン科」という、総合的な学習の時間にかわる新教科の開発です。
 この新教科のキーワードは「協働的な課題解決を支える資質・能力」や、各教科で汎用的に活用できる「情報活用能力」、「コミュニケーションの創出」などです。
 このような教科を超えたテーマで校内研究をし、いろいろな教科のエキスパートの目で見合うことは、たくさんの学びが得られます。
 まず、「社会科ではこうしている」「国語科的な視点から見てこう言える」というような、それぞれの教科の持っている良さや特質が浮かび上がり、それを共有することができます。
 次に、他教科の様子を知ることで、それぞれの教科が持っていた、こだわりやしきたりが、いかに取るに足らないものであったかにも気づかされます。
 たとえば、社会や数学の「話し合い」では非常にあっさりとした指示でも生徒が生き生きと取り組んでいるということを聞いて、「私の国語の話し合いでは、ひょっとしたら教えすぎだったんじゃないか」ということに気づかされます。こういうエピソードはいくらでもあります。
 そういうわけで、中学校の校内研究のキモは、教科の壁を越える「越境」、複数のエキスパートが、一人の生徒、一つのテーマで見合い、語り合うことにあるのではないかと思っています。
(4)「授業リフレクション」で公開研究会の改革に切り込む
4-1 残念な研究授業後の協議会
 附属学校にとって最大の校内研究イベントが、年に一度行われる公開研究会です。
 公開研究会は学校外のさまざまな人に授業を見ていただき、共同で検討するというまたとない機会なのですが、この公開研究会、「やってみた良かった」ということ、やってみてむなしさが残ることと二つのケースがあります。
 その最大の要因は、授業後の協議会です。
 授業そのものは「成功」でも「失敗」でも何らかの学びはあるわけで、それで「むなしい」と感じることがありません。
 しかし、協議会によっては「何のために授業をやったんだろう」と思うむなしさに授業者が一気に襲われることも少なくありません。
 例えば、参加者の人が、授業の内容とはあまり関係がない、些細と思われる質問をされる場合。(「生徒の漢字が間違っていましたが、どのような指導をされてますか?」など)
 また、例えば、授業をまったく見なくても語れるような、ご自身の教育観を蕩々と語られ、最後に付け足しのように質問される場合など。
 このような残念な協議会を私はいくつも経験してきています。
 しかしこれは、「参加者のせい」なのではなくて、協議会のあり方そのものが、そういうやりとりを生み出しているのではないかという問題意識をずっと持っていました。
4-2 授業リフレクションの試み
 そこで、昨年の公開研究会から国語科の協議会で「授業リフレクション」を取り入れることにしました。
 ちょうど所属している教育サークル(KZR東京むさし野会)に、授業リフレクションを研究している澤本和子先生がいらっしゃいますので、昨年から澤本先生の監修で協議会を一新してみました。(澤本先生の論考は、『国語科授業研究の展開』東洋館出版社、2016や、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!―授業リフレクションで校内研を変える』東洋館出版社、2005があります)
 
 昨年の公開研での授業リフレクションは以下の手順で行われました。
 やや細かいですが、そのまま参考にできるように書いておきます。
////////////////////////////
【授業リフレクションの流れ】
0 趣旨の説明
 メンター(澤本先生)が授業リフレクションの趣旨について説明。
 「今日の授業リフレクションの主役は〇〇先生(授業者)です。
 メンター、参加者は、授業者のリフレクションをお手伝いする存在だと思って、今日の授業リフレクションに参加してください。」
1 授業者の個人リフレクション(5分)
 授業者が、授業をやってみて感じたことなどを語る。
2 メンターとの対話リフレクション(20分)
 メンターが、1を受けて、授業者に質問をして授業者のふりかえりをさらに引き出す。
3 参加者との共同リフレクション(40分)
(1)コメントの記入
 参加者(授業の参観者)は1・2を聞きながら、その場で考えたことを次の2種類の付箋に書き出す。
・赤の付箋……これはいいな
・青の付箋……詳しく聞いてみたい、疑問
 あとで集約することを考えて、キーワード、またはキーフレーズで端的に一つだけ書くようにする。名前も記入する。
(2)付箋を整理する
 メンターは参加者からの付箋を、その場でKJ法でまとめていく。
 「教材」などのトピックごとにまとまっていく。
(3)整理した付箋をもとに集団リフレクション
 メンターは、整理された付箋を見ながら、意見が集中したものや、逆に際立ってユニークなコメントなどを取り上げ、なぜそのコメントを書いたか、参加者から意図を聞く。
 また、授業者に「こういう意見がありますがどうですか」などと質問して深めていく。(時間があれば、テーマを設定して全体でディスカッションすることもあるそうです。)
4 メンターから(20分)
メンターから、「授業リフレクション」の意義、背景についての解説。
5 参加者から手紙を手渡す
最後に、参加者が授業者にメッセージを書き、それを手渡しでプレゼントして終了。
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4-3 授業リフレクションの特徴と良さとは?
 私自身、初めて授業リフレクションに参加してみて気づいたこと、考えたことがたくさんあります。
 一つは、この協議会は「授業の善し悪し」を冷めた目で批評、検討するものではないということです。そうではなくて、「授業者が何を捉え、どう感じ、行動したか」に焦点があたっていることが特徴だと感じました。もう一つは、最初と関連するのですが、授業リフレクションでは、授業者がよくしゃべる協議会になるということです。うまくかみあっていない協議会ですと、授業者を置いてけぼりにして参加者が一方的にしゃべり、授業者の問題意識とは違う、あさっての方向で議論が進み、授業者は黙ってそれを聞いているということがあります。しかし、授業リフレクションでは「授業者のリフレクション」が中心に据えられ、それを他の参加者が支えるという構成になっているのがユニークだなと感じました。(これは私の感想なので「授業リフレクション」の本来の理論とは違うかもしれません)
◆◆◆◆◆◆
 ここで、ちょっとだけ宣伝なのですが、お茶の水女子大学附属中学校の公開研究会が10月28日(土)に行われます。
 公開研究会では各教科の授業とコミュニケーション・デザイン科の授業を公開します。国語科の事後協議会では、澤本先生がメンターとなって、この「授業リフレクション」も行います。ちなみに授業者は私(渡辺)です。中学二年のクラスの授業を公開します。
 下記HPに申し込み方法等が書かれています。
 当日飛び入り参加も可能ですので、是非お待ちしています。http://www.fz.ocha.ac.jp/ft/menu/resarch/d001961.html
 また、詳細等、知りたい方は渡辺までご連絡ください。
 watanabe.kokiアットocha.ac.jp (アットを@に変換してください)
◆◆◆◆◆◆
2 教育実習生は何に悩み、どう成長するか?
 次の話題は教育実習です。
 国立大附属学校は毎年たくさんの教育実習生を受け入れます。
 お茶大はそれほど多くはないですが、前任校の千葉大附属中では年間で150人近くの学生さんを受け入れることもありました。これを複数の期間(2~3期)に分けて受け入れることになります。
 一人の教員が受け持つ実習生は教科によって異なりますが、国語科の場合、千葉大では2~3人×3期間、お茶大では2期間で年間1、2人くらいです。音楽や美術などの一人教科はその3、4倍の実習生を指導します。また、学級担任であれば、クラスに最大6人くらい実習生が入ることもあります。
 実習期間は三週間。その間、多いときは50人くらいの学生さんが校舎内をひしめき合うことになります。
 今までの実習生指導の体験から、こういうことは良くあるよな、こうやってみんな悩み、伸びていくんだよな、というあたりをお話したいと思います。
(1)「どうして……しないの?」
 実習のスタートは観察期間。授業をひたすら観察していきます。
 この観察期間の実習生の反応として、私がとても気になる傾向が「どうして……しないのか」という疑問を実習生がもつことです。
 例えば、
「どうして全員が手を上げないのか」
「どうして話し合いで生徒は話さないのか」
「なぜ授業を静かに聞いていられないのか」などなど。
 実習生の頭の中では「全員が手を上げるのが当たり前」「話し合いで話すのが当たり前」というフレームができあがっている可能性があります。もともと教師を志望するくらいですから、まじめで優秀な人が多いのかもしれません。
 なかには、他の先生の授業を参観して「どうして……しないのだろうか」という批判めいたコメントを実習簿に書く学生さんもいるほどです。しかし、評論家のような言い方をしていた実習生も、実際に自分が授業をするようになると、そのようなコメントは激減します。
 「なぜ手を上げないのか」という問いは、「手を上げるのはどうしてだろう」という問いへ、「なぜ話し合わないのか」という疑問は「話し合えるのはどうしてだろう」へと。また「授業で静かになるのはどんなときだろう」へと、まなざしが変わっていきます。
 これは、同じことを言っているようで、大きな認識の変化があると感じられます。
 つまり「なぜこうしないのか」という理想から「こうしているのはどうしてだろう」というありのままの現実を捉えるまなざしへと、視点が変化したわけです。
 これは、実習生が評論家としてでなく、授業の当事者として育っていく一つのきざしだと思います。
(2)「……はしたくないんです」
 私は、実習生にはとにかく授業を楽しんで取り組んで欲しいと思っています。難しい顔をして、つまらない授業をするよりも、実習生にとって一番生き生きとした姿で生徒の前に立って欲しいと思っています。
 だから、実習生にとって「やらされる授業」ではなく「やってみたい授業」になるまで、私は指導教官として根気強く教材研究をフォローするようにしています。そして実習生と一緒になって授業づくりを楽しむことにしています。
 実習生とこんなやりとりがありました。
「私は、教師が一方的にしゃべる授業をしたくないんです」
「そうか」
「あと、枠にはめるような授業もいやです」
「ふーん」
「あと、こういうのも好きじゃなくて……」
「わかったわかった。なんとなく思いは伝わった気がするんだけど、『……はしたくない』っていう否定形じゃなくて、今度は『……はしたい』っていう肯定形で、あなたのやりたいことを言い直してみて」
「うーん、それが……」
 ギャグみたいなやりとりですが、こういうことは良くあります。
 まずは教師である実習生が、自分はこうしたいという明確な思いやイメージを持たないと、少なくとも持とうとしないと、授業をつくるスタートにさえ立てません。
 「こういう授業はしたくない」という否定形から「こんな授業をしたい」という肯定形へと変えていくために、指導教官の私は、根気強く実習生の思いを引き出していくことになります。
(3)「教師が教える時間」から「子どもが学ぶ時間」へ
 一週間の試運転を経て、いよいよ実習生の授業が始まります。
 最初の授業はとにかく「かちかち」です。
 いろいろな意味で「かたい」です。
・まず、表情が硬い。
・次に、授業の展開がかたい。臨機応変にいかない。
・そして、扱う内容がかたい。取り上げる内容やエピソードが、生徒の実感などとかけ離れた「教科書的」な感じ。もうちょっと子ども目線があるといいよね、というものになっている。
 こんな感じで「かたさ」が教師の身体全身に、授業全部にみなぎっているのが最初の授業です。
 授業の熟達とは、ひょっとしたらこの「かたさ」から、学習者に柔軟に変化させていくことのできる「やわらかさ」へと至るプロセスであるというのは言い過ぎでしょうか。
 「かたさ」と、もう一つの傾向は、とにかく詰め込みすぎるというものがあります。あれもこれも教えたい内容を詰め込みすぎて、実際に授業をしたらその半分も進まないという事態が起こります。
 実習生曰く、これは「間が持たないんですよね」ということ。
 教師が発問をしたら、すぐに答えてくれないと不安で仕方がない。
 あっという間に準備した内容が終わってしまって、授業の時間が余ったらえらいことだ。そう思って、とにかく生徒を置き去りにして、詰め込むだけ詰め込んで、ぱっぱと進めようとします。
 教師が指示や発問をする。そのあとで、生徒一人一人の考えている姿をじっくりと見回すだけの「間」をつくる。そのような、教師の一方的なペースから、学習者のペースへと寄り添うことができるようになれば、やっと授業が「教師が教える時間」から「子どもが学ぶ時間」へと動き出すようになります。
(4)「全体」と「個」とのジレンマに直面する
 やっと授業で「見る」「待つ」ことができるようになってきた実習生が次に直面するジレンマが「全体」と「個」への対応についてです。
 たとえば、実習生が授業である作業を指示しました。
 実習生は、指示を出したらすぐに、一番作業に手間取りそうな生徒のところに行き、手取り足取り個別指導を始めました。
 しかし、他を見ると、そもそも作業の指示がうまく伝わっていなくて、何をやったらいいか分からない生徒がいます。
 能力が高く、さっさと作業が終わってしまった生徒もいます。
 しかし、実習生は、手間取りそうな生徒に、ずっとつきっきりで指導をしているので、他の様子が目に入りません。つまり、他の生徒は置き去りにしてしまっています。
 実習生がよかれと思ってとった行動も、他の生徒にとっては適切な支援とはなっていなかったのです。
 学校の授業は家庭教師とは違います。必ず「全体」への指導と、「個」への指導とのジレンマに直面することになります。
 どうしても「個」に目が向きがちなのですが、そのときも常に「全体」が目に入っていなければいけません。そして「全体」へのバランスの中で「個」への支援をしていくことが必要になります。
 と、こうして口で言うのはとても簡単なことなんですが、これは実習生だからという問題ではなくて、私たち教師が必ず直面する授業の難しさでもあると思います。
(5)子どもから学び、リデザインしていく、二つの指導法
 最近、なんとなく実習生指導の勘所がわかるようになってきました。
 それはひと言で言うと、実習期間を通して、「子どもから学んで作り変えていく」ことを実習生が学ぶようにすればいいんじゃないかということです。
 たった三週間の実習期間でも、そのなかでの「教師の成長」「授業の進歩」というのはあります。
 それを最大化する秘訣は「リデザイン(再設計する)」にあるのではないかというのが現時点での私の見解です。
 教材研究をきっちり、みっちりやることは、そもそもできるものではありません。完璧に「完成」した授業案を子どもの前で展開しようとするのではなく、授業を常に「未完成」な開かれたものとして、子どもの姿を見ながら、何度も何度も授業を作り直していくようにしていくのです。
 そういう「子どもの反応から学んで作り変えていく(リデザインする)」を最大化させる実習生指導の方法としてうまくいったなあと感じているのが「A デュアル型指導法」と「B 振り出しに戻る法」です。(と偉そうにいっていますが、オリジナリティーを主張するようなものでは全くありませんので、どんどん他校でも使ってください)
A デュアル型指導法
 2人の実習生を受け持ったときのやりかたです。
 お互いに自分がつくった指導案をシェアし合うという方法です。
 次のようなやり方です。
・受け持つのは4クラス。これを2人で2クラスずつ分担する。
・授業では二つの教材(例、小説)を扱うが、取り上げる指導事項は同じものとする。(例えば「登場人物の人物像を読み取る」という共通の指導事項について、二つの教材で別々の授業をつくるというようなイメージです)
・実習生は、二つの教材のうちどちらかの指導案を書く。
・まずは、自分がつくった授業案で授業をする。そのあと、他の実習生がつくった指導案で授業をする。
・その間、授業での子どもの反応をしっかりと観察し、その反省点を次の授業に生かすようにお互いにアドバイスし合う。
 このやり方で実習をすると、次のような気づきが得られます。
・共通の指導事項を、別の人が、別の教材、指導法で授業をすることから生まれる気づき。
・自分がつくった授業を、他の人が生徒の前で授業している様子を見て、それに対してアドバイスすることから生まれる気づき。
・自分がつくった授業を、他の人が授業して、ふりかえるのを聞いて、さらにそこから生まれる気づき。
などなど。
 そういう何重、何層もの気づきが生まれやすくなるのが、この「デュアル型指導法」です。
 この実習生指導の発想は、うちの学年で、道徳の指導案を学年スタッフが共同で分担して作成し、シェアしているところから生まれたものです。
 確かに、自分がつくった指導案、自分がやった授業を他の人が授業するのを見るのは、また、他の人がやった授業を自分でもやってみるのは、色色な意味で、かなり強烈な体験となります。
 「こんなやり方があったのか」という反面、「自分だったらこうする」という気持ちがせめぎ合います。
 そもそも、どんな授業も、まねしようにもまねできるものではありません。子どもの反応も、同じ指導案であっても、教える教師が違えば全く別物のように異なります。
 そこから、自然と「私は、授業をこうアレンジしたい」という自律的な「リデザイン(再設計)」の発想が生まれます。そういう授業には「この人にしかできない授業」という、その人らしい「味わい」も出てきます。
 これは、複数の実習生を受け持つことのできる附属学校ならではの実習生指導の方法かもしれませんが、教育実習でなくても校内研究でも一般的に行うことのできる方法だと思います。
B 振り出しに戻る法
 もう一つの方法は「振り出しに戻る法」です。(ネーミングはかなりいい加減)
 これは一人の実習生を受け持ったときにとった方法です。
 4クラスのうち、まず2クラスを最後までやってしまう。そのあと、残りの2クラスの授業を「振り出しに戻って」スタートさせるという方式です。
 この方法のキモは、ゴールのイメージを持った上で同じ内容を別クラスで繰り返していき、試行錯誤のサイクルを回していくというものです。
 当然のことながら、最初にやった2クラスとは見違えるくらいに授業を向上させることができます。(最初のクラスにはごめんなさいですが、それはちゃんと私がフォローします。)
 繰り返して行うことで「次はこうしてみよう」という意識が生まれて、どんどん改善していくのです。
 なぜ改善したか、これは言うまでもなく、子どもの姿、反応を見て、実習生自身が授業をリデザイン(再設計)したからに他なりません。
 「指導案」を書いたのは最初の一度だけです、しかし、そこから指導案に縛られずに、子どもの反応、学びの様子を見て、もう一度教材に戻って研究をしなおして、授業を更新していこうという気になったのでしょう。
 こういう教材再研究、再設計は、実は中学校の教師なら当たり前のようにやっていることでもあります。色々なクラスで、何度も何度も同じ授業を繰り返す中で「やってみたらこうなった、なぜだろう」という問いが生まれ、「こうすれば良いのでは」という仮説を見いだし、「次のクラス、授業ではこうしていこう」と、子どもの姿から学び、授業を組み立て直していくのです。
 この「リデザイン(再設計)」は、4クラス連続して授業を行うよりも、ある程度時間をおいて再び実践するほうが、当然準備も綿密に行えて、うまくいきます。
 以上見てきたように、たった三週間、10時間程度の授業実習でも「子どもから学び」、「授業をリデザイン(再設計)していく」ということは体験することができます。
 そしてその威力を知ることのできた実習生は、きっと教壇に立ったあとでも、いつまでも、子どもから学び続けることのできる教師になってくれると思います。それこそが、私が教育実習で実習生に学んで欲しいことでもあります。
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 私も昨年、お茶の水女子大附属中学校の公開研究会に参加しました。文部科学省の指定を受けて新たな教科カリキュラムづくりに取り組んでいる学校でもあり、大変清新な研究でした。と共に、渡辺さんがご紹介くださっている澤本和子さんの授業リフレクションも実際に体験することができました。今年度の研究会も、校種を問わずご参加をお勧めします。
 それにしても、教育実習の指導について。大変読み応えがありました。 「子どもから学び、リデザインしていく」体験の場にしていく…。 うーん現場の教員に向けられているメッセージとも読んだのは、私だけでしょうか…。
 次号は、9月22日金。矢野博之さん(大妻女子大学教授/REFLECT理事)です。教師教育学会の事務局を務めるなど、教師教育学に中心的にコミットされてきた方、です。
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メールマガジン「教師教育を考える会」
26号(読者数2534)2017年9月20日発行
編集長:石川晋(zvn06113@nifty.com)
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北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
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