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2017-10

新しい教育施策や手法が・・・ - 2017.08.01 Tue

新しい教育施策や手法が登場するたびに、「それは前からあった」という議論が起こる。WSありました、ファシリテーションありました、アクティブ・ラーニングありました、インクルーシブありました、協同学習ありました、総合的な学習の時間ありました、論理的思考力ありました、深い学びありました、ライティングワークショップありました、リフレクションありました、プログラミング教育ありました、教室リフォームありました……枚挙にいとまがない。
それはそのとおりだが、そのとおりではない。ここをわかってもらうのが難しい。しかしここを議論しないと、全て過去の実践や成果にのみ議論が回収されてしまうことになる。

すぐれた先人のすぐれているゆえんは、多くの実践者が目をつけない、気が付かないことに、焦点をあてる「卓見」を持っているところだ。それに加えて他の人と違う努力の方法と方向も持っている人もいる。だから、例えば70年代からジグソー学習を教室で活用する先人が点のように存在することは当然である。80年代中盤に既に教えない教育を実践した先人がいるのも当然だ。しかもそうしたもののいくつかは書籍や研究成果としてまとめられており、研究的実践者としていたいなら(いることを運命づけられているなら)、それらを読み直した上で、自分の教室の実践を研究的に屹立させることは当然だ。

例えばせめて80年代以降の自学ノートの実践の集積、福山実践や岩下実践の記録に目を通すことなしに、自学ノート実践を開発したなどとは言えない。例えばせめて90年代後半のメディアリテラシー実践を知らずに、新しい視点でメディア分析実践を構築していますなどということは、不勉強をさらすに等しい、研究的実践者であるならば。
ただし彼等の誰一人時代の文脈や社会の要請と無関係にいられた者はいない。紐付いている文脈と実践や提案を切り離すことはできない。例えば生活つづり方の文集活動が、形態としては、ライティングワークショップの出版活動と酷似しているからといって、それを、「昔からあった実践です」と説明づけるのでは、歴史に学ぶ視点を持たず、歴史を押し付けるだけの老害になってしまう。ここを誠実に考えられる者が、教育実践と研究の歴史をほんの少しでも愚直に前に進められる人間だ。

新たにカタリ直されようとする実践と、既にそれは昔からあったことだという議論とは、注意深くよりわけなければならない。例えば戦後登場した新教育の流れと2000年代初頭の総合的な学習の時間とを関連付けてとらえなおすことは極めて重要な示唆を与えてくれるが、それは、今ここで、それがどのように再構成されて活用されるべきかを考えるうえで大切なのである。昔からあったものでしょ、という理解や説明は思考停止や既存学習の無批判な信奉になってしまいかねない。その視点からいえば、かつてあったものといまここにあるものが、おなじであるわけがない。以前からあったという議論の立て方は違っていると言わねばならない。

まあ、後からやってきた若い人たちは大変だ。でも、前向きにとらえようではないか。既に「ここまで」実践は積み上げられている。それを踏まえて、かけ合わせながら、新しい視点や必要を加味しながら、もっと価値のあるものを、きみたちは、生み出せる可能性の地平に立てるのだ。

しかしなあ・・・「昔からあった」を振りかざしてしまいたくなる自分を抑えることはとても難しい。ぼくも、しばしば、そこに立って、経験と知識を振り回してしまいがちだ。50歳を過ぎて、ぼくの賞味期限は切れかかっている。いや、もう切れていると、悲しいけれど、考えている。そこに立ってはじめて、もう少しぼくの日常を延命することが許されるような、そういう気持ちになる。
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石川晋

Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
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