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2017-07

【教師教育を考える会メールマガジン3号・・・杉本直樹さんの原稿です】 - 2017.06.27 Tue

杉本さんが書いてくださいました。
もちろん、部活動視点からの教師教育論、です。

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メールマガジン「教師教育を考える会」3号
                     2017年6月27日発行
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 部活動指導者としての学校の先生
                   大阪市立上町中学校教諭
                             杉本 直樹
http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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 第3号は、杉本直樹さん。『部活動指導スタートブックー怒鳴らずチー
ムを強くする組織づくり入門ー』(明治図書出版,2015)で広く知られる大
阪の中学校教諭です。国語科教師としても多数のご発言がある方ですが、
今号では、もちろん部活動視点から教師教育を論じてくださっています。
                           (石川 晋)
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1.丸腰で部活動指導をさせられる若い先生

 大阪市の中学校で、野球部の顧問をして15年めになりました。

 僕は典型的な「野球を教えたくて先生になった」クチで、採用と同時に
野球部の顧問になりました。他の部の経験はなく、すぐに自分の専門の野
球を教えられる立場となりました。

 中学校の現場では、若い先生は部活動の顧問(特に運動部)に充てがわ
れます。経験の有無は関係なし。若いというだけで担当が決まります。
 「◯◯先生の代わりに来た先生、若い人やから◯◯先生のあとに陸上部
任せたらいいね」などと、その先生の「部活動顧問としての専門性」が話
題になります。
 学校にとっても、ある部の顧問が抜けて次の顧問をどうするのか、とい
うのは学校の体制を左右しかねない大きな人事案件と言えます。

 しかし、部活動指導に関しては、養成段階での勉強があるわけでもなく、
若い先生方が部活動指導で悩むのも無理ありません。
 「野球部でいじめ事象があった」「サッカー部で万引きがあった」「バ
スケット部が遠征移動中に電車で迷惑行為があった」などなど、こんな情
報は耳を塞いでいても入ってくるものです。
 3学年の担任になる部活動顧問。若い先生が丸腰でうまくいくはずがな
いのです。
 現在、教育実習生が本校に来ています。彼らに聞いても、部活動指導に
ついて、大学であまり学ぶ機会がないそうです。
 僕も自分が受けてきた指導を焼き直したり、先輩から教えてもらったり
してその知識を得てきました。指導の方法や教師のあり方は、今思うと当
初の自分のイメージとはずいぶんかけ離れたものでした。

 僕はそんな問題意識から、本を書かせてもらいました。『部活動指導ス
タートブックー怒鳴らずチームを強くする組織づくり入門ー』(明治図書
出版,2015)と銘打ったその本は、部活動顧問を夢見る学生、なりたての
若い先生方をイメージして書いたものです。
 この本は「どうやって部活動という組織を作っていくのか」ということ
に焦点を当てています。学校をめぐるあらゆる仕事のうちの、どの部分に
部活動が位置するのか、どういうふうに部活動顧問業をとらえたらいいの
か。こういう現場の「当たり前」を顕在化させたという特徴があります。
 学級経営や教科指導の本はあまた出版されているなかで、普通の部活動
指導に関する本はほとんどなかったように思います。
 多くは「目指せ全国!」「勝つための……」といった、一足飛びの印象
を免れない趣旨のものばかりです。僕が知っている限りでは、若い先生は
そんなところまで行き着いていないのです。

 「学ぶ場がないならつくればいい」ということで、複雑な問題が散見す
る部活動指導について、先日学習会を持ちました。大学生も多数参加して
くれました。関心の高まりを感じました。
 現場でも、部活動指導について積極的に研究は進んできていなかった現
状があります。生徒指導の一環としての認識はあったものの、「ではどの
ようにしてなされるべきか」ということについては、いままさに普遍的な
価値観が見直されてきている時期といえます。  

2.部活動指導は「独自採算」

 部活動指導は、はっきりとした「独自採算」です。教師は毎日あらゆる
リスクを負いながら放課後の部活動に従事しています。
 たとえば、「部のトラブルは部で解決を」といった暗黙の了解がありま
す。確かに、部の責任は顧問かもしれない。
 でも、若い先生がそんな臨機応変にトラブルに対処できません。経験が
なさすぎる上に、先述したようにそういったことをほとんど学ぶ機会がな
かったのです。仮にそれがあったにせよ、現場で起こる指導事象は実に多
岐にわたります。ひとつずつ対処していくためには、やはり現場での経験
がモノを言います。

 部活動をめぐる諸問題は、ネットだけでなく世間を騒がせています。体
罰、長時間勤務、連勤など。現場の人間からすれば「やっと出てきたか」
と思う限りです。部活動をめぐる現状は複雑なものなのです。訴訟も起き
ています。そんな重責を一手に担わなければいけないということを、教師
を目指す学生たちは、どれほど自覚しているでしょうか。
 一方で、すべてが顧問の責任となるのも困ります。
 現場では、非常に微妙なバランスで、あまりそうしたことを考えずに、
部活動指導が行われています。重責を前にして、部活動顧問から逃げ出し
たくなるのも当たり前です。
 逃げる……。こういう感覚が中学校の現場にはあります。何も「逃げ出
した」わけではなく、自分にはできないと判断した、ある意味では、賢明
な選択かもしれません。
 勝たねばならない、休んではならない、求めに応えなければならない。
 そんな縛りにも、経験の乏しい先生は苦しんでいます。

 いずれにしても、現状では、中学校教員から部活動指導を除くことはで
きません。立て込んだ指導には関知しない、自分の部を若い先生に任せて
定時に退勤…そういうベテランの先生もたくさんいますが、ベテランの先
生も若い先生も、本来は同じ責任を担っているはずです。生活指導に関し
ても、ベテラン教員はきっと若い先生よりも長けている。生活指導のノウ
ハウもない若い先生にとって、部活動指導は負担でしかありません。若い
先生が過剰に部活動指導に時間を割かれずに、授業や教室づくりの力を磨
いていくためには、部活動指導へのベテランの参画は大変重要です。

3.「地続きの指導」の提唱

 嬉々として、専門の部活動を持てた先生はどうでしょうか。昔気質の威
圧的な姿勢で生徒に向き合っていないでしょうか。今日的な部活動指導の
あり方は、もっと議論されてもいいと僕は考えます。

 学級において、失敗した生徒をやり込めますか。もしやりすぎていたら、
隣のクラスの先生や学年の先生がたしなめるはずでしょう。
 よく「生徒になめられてはいけない」と聞きます。ベテランの先生方な
らクリアしてきたであろう方法知が、思うように伝達されていないのです。
 しかも時代の要請も変わってきています。
 学級をどうしていくか。授業をどう組み立てていくか。4月にはどんな
ふうに声をかけるのか。こういった視点を部活動指導にも採用していくと、
すべきことがわかってきます。
 養成段階や若い先生にどうやってそれを知ってもらうのか。その部分の
発信こそ、僕の問題意識そのものです。
 部内で折り合いがつかず、辞める子がいたとしましょう。本人、保護者、
顧問が納得していても現状では「挫折体験」として生徒には残ってしまい
がちです。『辞めたらあかん』という縛りが生徒を苦しめる現状もありま
す。

 「熱血」のイメージが、学校における部活動指導をおかしなものにして
しまっています。
 いまだにグランドに怒声が響きます。そんな先生は、教室でも事あるご
とに怒鳴っているのでしょうか。
 「グランドでは人が変わる」とうそぶく先生がいます。そんなのは生徒
にとって迷惑でしかありません。教室では優しいのに、グランドでは毎日
怒って……。耳に痛い方もいらっしゃると思います。無理もありません。
 それが現状であり、昔からのやり方です。

 僕はこういう現状を見て、「地続きの指導」というものを拙著以降、提
唱しています。
 「グランドと教室はつながっている」というのがこの考えの基礎。
 グランドと教室がつながっているのであれば、同じように生徒と接すれ
ばいい。いろいろな子がいる教室で、どうにかして所属感を高めようと考
えたり、起こる問題をみんなで考えたり。多くの先生は苦心して良い学級
を作っておられます。
 授業も然り。生徒のミスに毎回怒鳴って指導していますか。きっと違い
ます。
 「そんなふうにしたら生徒になめられるのでは?」上下関係でとらえる
とそういうことも言えるかもしれません。でも、信頼関係という視点で考
えると、粘り強く声をかけて、できないことをできるように助けたり、同
じことで何度も注意したり。教室ではそんな光景は当たり前のはず。でも
グランドではそうじゃない
のです。

 金メダルをとるために、厳しい指導を受けているジュニア世代を目にし
ます。メディアは、こぞってそういう報道を繰り返します。
 ただそれはそういう活動であるということがわかって指導を受けている
のであって、プロフェッショナルを育成する機関としては部活動の場面は
不向きだと考えます。
 第一、毎日指導にべったりつくことはできません。初心者の子もいます。
 朝練? 僕はいらないと考えます。生徒の本分は授業です。お弁当を用
意できない家庭もあります。そんなことを知らずに、勝つことを第一目標
としてやってしまったら、保護者の理解はえられません。
 授業で寝ている自分の部の生徒がいたら「たるんどるな。ペナルティで
走らせよう」と。生徒目線で考えたら眠くなるのは当たり前です。朝食を
とらずに朝練に来ていたかもしれません。ぱっと思いつくだけでも、数々
の背景が想像できます。
 『どうやったらいいかわからない穏健派』『自分のやり方でとにかく
突っ走る熱血派』。
 いずれも適切な指導はできません。学校の部活動がどういうものか、よ
くわかっていないからだと思います。
 わからないからといって放置するのも考えものです。
 また、ペナルティで縛り上げるのは、外聞や体裁を気にする顧問のエゴ
イズムに他なりません。

4.「ブラック部活動論」のこと

 最後に、いま何かと話題になっている「ブラック部活動論」について、
述べておきたいと思います。
 部活動の顧問は非常に膨大な時間的な拘束があります。土日に活動、し
かも一日中。例をあげれば枚挙にいとまがありません。家庭事情もありま
すし、健康状態もあります。何かを犠牲にしていると思った時点でその活
動スタイルは破綻しています。
 異常なまでの過熱は確かに考えものなのですが、僕は一連の動きをとて
も冷静に見ています。というのも「中学校の先生ってそういう仕事じゃな
いの?」と思うからです。

 ただ、だから現状を全て受け容れなさいということではありません。
「そういう仕事」の中身が問題です。
 語弊を恐れず言えば、部活動が完全に学校現場からなくならない限り、
同様の現象は回避できないでしょう。変えなければならないのは制度の前
に「考え方」や「あり方」です。

 高校野球の甲子園大会に見られる精神性は、部活動というものの非常に
わかりやすい例だと僕は考えます。ひたむきに打ち込む子どもの姿は見る
人の感動を誘い、ドラマや美談として語られます。
 僕はこのような「何もかもを犠牲にして打ち込む」という姿勢が、果た
して学校の現場に向くものなのかと懐疑的な見方をしています。そこまで
じゃないのに……、という一定の層がもはや入っていけない世界になって
いるのです。

 僕が関わっている中学校の野球部の世界でも丸坊主がずいぶんと減って
きました。ここでは詳述しませんが、要するに世間が「気づいてきている」
のだと僕は感じています。
 プロフェッショナルや全国を目指すような、そういう活動がもちろん
あってもいいと思います。ただ、そればかりではない、そうじゃなくてい
い、という考え方がそろそろ学校の部活動の現場に入ってきてもいいので
はないかと。

 顧問がまず指導すべきは、生徒としての一人前。学業はそっちのけ、掃
除もロクにしない、行事にも非協力的。こんな生徒がいくら大会に勝ち進
んでいこうが、僕は何の値打ちもないと思います。
 いまのような時代だからこそ、「学校の教育活動としての部活動」とい
うものをもう一度見直し、今までは言いにくかった「勝つことよりも大切
なもの」を声高に言うべきだと考えます。
 だから必ずしも土日に活動しなくてもいいし、もちろんしてもいい。ス
ケジュールやタイムマネジメントは顧問の裁量に最大限に委ねられるのが
理想です。
 そこまでなって、はじめて多少の時間のオーバーは、致し方ないと個人
的には思います。現行のシステムのままでは、ますます不都合が出続ける
とでしょう。
 システムの変遷は僕の関心事です。学校の部活動の目的が明確になれば、
生徒の側も選択に幅が出るのではないでしょうか。ちょっと違うな、と思
う人は外のチームへ。学校の部活動に関わる者としては「こういう形でし
かできません」と言い切る活動にしていきたい。そう思います。

 現在21連勤の真っ只中です。現場から「学校だからできる部活動のあ
り方」を発信し続けていきます。

 初心者の子が引退をかけた試合で、タイムリーヒットを打ちました。駆
けつけてくれた保護者が、泣きそうな顔で僕に感謝の言葉をくださりまし
た。卓球部から移ってきた生徒でした。本人も笑顔で引退していきました。
 それぞれの部に、それぞれのドラマがあります。厳しい社会の中で、学
校くらいはその子の全てを受け入れる場であってもいいのではないでしょ
うか。
 僕は専門でやってきた部の指導をしています。
 技術指導の聖域に守られて指導を続けてこられたことに自覚的でないと、
教員志望の学生や若い先生には偏った形で伝わります。僕としては、いま
ここに自分の問題意識が移りつつあります。 
 教えられない人でもできる指導がきっとある。目指すはそういう指導の
あり方です。専門外の先生がいかに「部活動指導者」でいられるか、いる
ために何が大切なのか。

 学校と学校外との役割分担がなされたら、いよいよ本格的に職務の精選
とマインドの共有(もしくは住み分け)が始まることと思います。
 学校の部活動の目的がますます注目されるなかで、先生にしかできない、
学校にしかできない部活動指導というものを、教員志望の学生や若い先生
たちと考えていきたいと思っています。

======================================================
 部活動の問題に関しては、名古屋大の内田良さんの発信に注目が集まり、
今まさに旬のテーマです。ただ、学校内部から精力的に立場も名前も出し
た上で発言をされる杉本さんは非常に貴重な存在です。また、本稿をご覧
いただいてわかる通り、この件は、中学校現場で教師がどのように育って
いくか、またその育ちを支えていくかという視点と密接に関わっている問
題であると言えます。

 読者のみなさんには、どうぞこのメールマガジンの存在を、SNSやブロ
グ、そのほか様々な媒体で広く紹介していただけたらと願っています。購
読は下記のサイトからできます。
 次号は、7月4日火曜日。町支大祐さん(東京大学マナビラボ 特任研
究員)の登場です。実践現場と研究現場とを往還しながら、教師教育への
提言を続ける、貴重な若手研究者のご発言にどうぞご期待ください!

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メールマガジン「教師教育を考える会」
3号(読者数2298)2017年6月27日発行
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Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
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