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2017-08

【見ていただければわかると思いますが】 - 2017.05.21 Sun

 昨日は築地久子さんの姿を20数年ぶりに拝見した。
 青い美しいワンピースとヒール。
 70代の女性とは思えぬ、華やかな姿で、現役時代をほうふつとさせる佇まいであった。
 ぼくは若い時に築地さんに出会って、授業、教室もさることながら、彼女の服装に驚いたのだった。ぼくの周りには、そのように華やかないで立ちで子どもたちの前に出る先生はいなかった。
 昨日のお話をお伺いしながら、ぼくには、そのわけが、つまり、そのような姿で子どもの前に立ち続けた築地さんの思いが、多分「わかった」と思った。

 ぼくもほんの少し遅れてだが、当時、築地学級に瞠目した教師の一人である。関わる文献も丁寧に読んだし、自分がたまごの会のメンバーだったこともあり、当時精力的に分析していた藤川大祐さんのお話も何度か直接おうかがいした。授業づくりネットワークは90年3月、92年9月の二回、築地学級の特集を組んでいて、例えば昨日築地さんがお話されたジャンケン授業の授業開きの話は、まさに藤川さんが取材に入った92年9月号所収の授業(記録)についての語りである。だから、お話の中身については、ほぼ既知のことであった。
 唯一、読んだ記憶のないことは、東京の修学旅行の話で、「常任理事国になるにふさわしい国の首都といえるか」という課題で、東京の修学旅行をするというのは、極めてアイロニカル(皮肉)で、東京オリンピック開催を前に東京詣でを続ける地方の学校の修学旅行の実態に既に20年も前に冷や水を浴びせているような中身であった。
 もう少しだけ書くと、ぼくが最後のクラスの子どもたちと歩いたコンセプト型の修学旅行に、今更ながらどんと背中を押していただいたような気持ちになった。
 そう、修学旅行も、村づくりも、築地さんには、それはそれ、これはこれ、はなかったのだ。
 全部、そういう言い方が許されるなら、「授業」だったわけである。だから、学級開きの一時間めから、ジャンケンの授業ができる。ここが分からない人との、思想的断絶は果てしないと思えた。

 さて、今回の講演会で、もっとも大きな衝撃だったのは、次の場面だった。
 講演の途中で、カルテが配られた。これも、『生きる力をつける授業』(黎明書房)などで、打ちなおしたものではあるが、見ていて、ぼくには既知のもの(現物も昔、たしかにみたことがある)であった。しかし、そこで、築地さんが全く自然に話した言葉が、表題の言葉だった。
 「見ていただければわかると思いますが」・・・。

 いいえ、「見ても」私にはわからないのです。

 築地実践が、個の膨大な記録(カルテ)に裏打ちされたものであることはよくわかっている。
 そして、彼女のようにできなかったのも、そもそもこのカルテ(のようなもの)が作れなかったこと、そして、活用できる能力がなかったことによる、とぼくは思っている。それは、研究的に読み解く能力と言う意味だけではなく、現場でもあれほどのカルテを蓄積していくことは困難で、しかも仮にそれだけの量を書いても、それを有機的に結び付けて、課題を設定していくことは困難だということだ。

 それを、 「見ていただければわかると思いますが」とさらりと言ってしまえる築地さんは、圧倒的な子どもの認知力を背景に、あの実践群を生みだした人なのだ。そして、そのことにひょっとすると、築地さん自身はそれほど自覚的でもないのかも知れないと、そういうことを考えた。

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 教師が教え育てることが、築地さんの実践でもまたベースにはっきりとある、ということがよくわかった。そして、築地実践はその極北の一つということになるのだな。それを突き詰めていくなら、ここまでやれなければならない、ということなのだねえ・・・。

 だが・・・から先が、ぼくが広げていきたい世界、ということになる。
 築地さんご自身も、早くご自分の実践を乗り越えていく実践が登場することを待っているはずなのだ。それも、広くみんなが「見ていただければわかると思いますが」というレベルで提案できるような実践群が。

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Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
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