topimagetopimagetopimagetopimagetopimagetopimagetopimagetopimage

2017-10

食事をつくる - 2012.04.23 Mon

 新卒教諭として初任地に赴いた時、母に何度も何度も言われたのは、自分で食事を作って食べなさいということだった。そもそも僻地で夜7時を過ぎて空いている店などないところだった。運転免許もまだ持っていなかったから、なんとかかんとか自分でやりくりしなければならなかった。米だけは炊いていたが、後は缶詰、というような生活からスタートし、学校・授業の荒れに立ちつくす中で、なんとか免許を取り、中古の車を買った後は、夕方から逃げるように車で遠出するのが常だった。
 結局、食事はほとんど満足に作らず、20キロほど離れた街までいって、弁当を買って食べる、そんな日々だった(その街にもまだコンビニはなく、22時には残る一店も閉まる)。

 それで、ほんの時折、家の台所に立ち、うずたかく積まれた弁当ガラの隅っこで、カレーを作ったりすると、突然、自分の中にわずかに残っている知的な人間の姿が立ちあがってくるようだった。その体のあちこちに血がかよい、世界が色を取り戻すような感覚を、今も覚えている。
 食事をつくるとは、そういうことなのだ。

 若い先生方に、自分で食事を作るようにと、しばしば勧める。
 それは、バランスよく栄養を取るために、できるだけ食事を作りなさい、というような話ではない。
 食事をつくるというのは、まさに人間的な営みなのであり、そのことで、生活の(命の)リズムは整えられるということなのだ。ここをていねいにできなければ、授業も教室も荒廃する、新卒の日の自分がそうだったように。

 そもそも学校の先生という仕事は、何もものを生み出さない仕事である。人を育てる、わけだが、それも中学生くらいになると、小学生が九九を憶えていくような目に見えた場面など、ほとんどなくなる。短期的には育っているのかどうかもわからない日常の連続なのだ。
 先生という仕事は、ほうっておけば、何も自分の手で生み出すことなく日々が過ぎていく。こうした側面だけ見れば、議論を待つ必要などなく、教育はサービス産業である。ずっしりと何かを作ったという実感からは、基本的には遠い仕事だと言わざるを得ない。
 だからこそ、食事をつくるというような、何かを確実に生み出し、おいしかったりまずかったりする手ごたえ歯ごたえを確実に日常の中にキープしておかなければならない。

 いつだったか、新卒の任期を終えた同僚が転勤した後で、その先生の分別されないまま、あちこちのごみステーションに放り込まれたごみの苦情で、教員が手分けして謝って歩くという悲しい出来事があった。
 同僚たちは憤慨していた。その憤慨は分かる。だが、ぼくにとっては憤慨というよりも、いたたまれない思いの方が大きかった。
 一歩間違えれば自分もそうしたかも知れないと、ぼくは自分のかつての姿と重ねながら思っていた。

 食事をつくることを、生活の根幹に置けない先生の実践は、生活ごと根本から荒れてゆく。


ヤナーチェク:管弦楽名曲集ヤナーチェク:管弦楽名曲集
(2001/02/21)
アルミンク(クリスティアン)

商品詳細を見る



Quartet for the End of TimeQuartet for the End of Time
(2001/03/02)
Ensemble Incanto

商品詳細を見る

久しぶりに聴いた。
 未知のアンサンブルによる演奏。美しいのだが、結構温かい音色の演奏で、この曲を聴く時にはもう少し厳しい音色と鋭い響きであっても、と思う。まあ、好みの問題か。昼間っからこれを聴かされる娘は、大変だな。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://suponjinokokoro.blog112.fc2.com/tb.php/1366-9df5997c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめteみた.【食事をつくる】

新卒教諭として初任地に赴いた時、母に何度も何度も言われたのは、自分で食事を作って食べなさいというないところだった。運転免許もまだ持っていなかったから、なんとかかんとか自分でやりくりしなければならなかった。米だけは炊いていたが、後は缶詰、というような生活...

Mr.children”祈り ~涙の軌道 / End of the day / pieces” «  | BLOG TOP |  » 便秘(ぎみ)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

FC2カウンター

最新記事

プロフィール

石川晋

Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
https://www.facebook.com/profile.php?id=100000528475920
ぼくにできそうなことは、どんどんお受けしますので、遠慮なくお知らせください。FBのメッセンジャーが一番確実です!

月別アーカイブ

最新コメント

カテゴリ

未分類 (50)
教育 (2173)
音楽 (265)
雑記 (341)
映画 (15)
読書 (31)
美術 (15)
研究会等 (10)
自然保護 (9)
CD&DVD (0)
育児 (30)
自然 (82)
対話 (7)
思考 (36)
演劇 (5)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QRコード