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2017-08

★学びのしかけプロジェクトメールマガジン216号 藤原由香里さん「見えないものを共に見る~関わりを深める「学びのしかけ」~」 - 2012.03.16 Fri

ぼくが編集するメールマガジンの最新号です。今号は藤原由香里さん!
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
                216号 2012年3月16日発行
                        (毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1.見えないものを共に見る~関わりを深める「学びのしかけ」~
       「ワークショップ」編集委員
京都府八幡市立美濃山小学校 教諭(休職中)
兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 教育コミュニケーションコース
                           藤原 由香里
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 「見えないものを共に見る」とは、またなんと魅力的なタイトルでしょ
う。藤原由香里さんの最終回です。           (石川 晋)
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1.見えないものを共に見る~関わりを深める「学びのしかけ」~
          「ワークショップ」編集委員
京都府八幡市立美濃山小学校 教諭(休職中)
兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 教育コミュニケーションコース
                         藤原 由香里
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0.はじめに

 これまで2回に渡り、演劇やダンスを取り入れた実践について執筆させ
ていただきました。
 1回目には「ムーブメント・パス」、2回目には「プレゼント」、そして
今回は「イエス・アンド・レポート」というインプロのゲームを紹介して
います。それらゲームの映像を、多くの方のご協力の元に作成しましたの
で、ご紹介させていただきます。以下のブログからご覧いただけます。よ
ろしければ、是非ご覧下さい。
 http://d.hatena.ne.jp/Yuka-QP/20120313

1.インプロ・マインドについて

 さて、今回は、私と私が担任した児童Aくんとの関わりを、「インプロ・
マインド」、「役を演じる」という視点で紹介したいと思います。

【インプロ(即興演劇)について】
 インプロは、英語のインプロヴィゼーション(Improvisation;即興)とい
う言葉が略されてできた言葉です。俳優たちが、脚本も、設定も、役も何
も決まっていない中で、その場で出てきたアイデアを受け入れ合い、ふく
らませながら、物語をつくり、シーンをつくっていく演劇です。
 <参照>小林由利子他『ドラマ教育入門』図書文化社,2010.

 インプロのワークショップでは、数多くあるインプロのゲームを体験し
ながら、そのゲームや活動の根底に流れる考え方、精神、すなわちインプ
ロ・マインドを感じることができます。インプロは、単なるゲームや手法
ではなく、非常に魅力的な考えを持つ演劇です。

【インプロ・マインドってどんなもの?】
 私は、鈴木聡之氏のワークショップで数々のインプロのゲームを体験し
たり、参加者の方と語りあったり、インプロについての本を読んだりしな
がらインプロ・マインドを体感してきました。
※鈴木氏の活動については、鈴木氏のHPをご覧ください。
 「インプロパーク・ホームページ」 http://www3.plala.or.jp/impro-park/

 例えば、次の二つです。
<その1>「Yes, and.」
 相手の提案を受け入れ(Yes)、それに自分のアイデアを足していく(and)
というものです。インプロは、即興で作りあげる演劇であり、事前の打ち
合わせやシナリオがないだけに、相手の提案をよく聴き、否定せずに受け
止め、反応していくことが大切にされます。

<その2>「Give your partner a good time(相手によい時間を与える)」
 即興のやりとりで芝居を作っていく際に、目立とうとしておもしろいこ
とを言ったり、自分をよく見せたりするのではなく、一緒に舞台に立つ相
手を輝かせるようなやりとりを心がけることがよい芝居を作る、という考
え方です。また、そうすることにより、演じる人だけではなく、観客にと
っても、おもしろい芝居になるといわれています。

 次の本は、インプロの考え方やゲームが紹介されており、インプロを詳
しく学んでみたい方にお勧めです。

・高尾隆『インプロ教育─即興演劇は創造性を育てるか?』フィルムアー
ト社,2006.
・絹川友梨『インプロゲーム』晩成書房,2002.

2. Aくんとのエピソード

 出会った当初から、私を挑発するような態度で関わってくることの多か
ったAくん。新学期、教室に行くと、机の上に足を上げて座り、担任の私
を“歓迎”してくれました。

 続いて、入学してくる一年生の教室に掲示するメッセージに「この学校
の給食はまずい。」という内容を含んだメッセージを書き、早速指導する
場面が訪れました。

「なんでこう書いたの?」
「だって、ほんまのことやし。」
「わかった。ほんまのことなんやな。でも、これを読んだ人はどんな気持
ちになると思う?」
「別に。おれやったら別にいい。何も思わない。」
「わかった。君はそう感じるんだ。それは認める。どう感じようと構わな
い。でも、君とはちがう感じ方をする人もいっぱいいるねん…。」

 一般常識としてこうすべきだ、という指導や、相手の気持ちを考えてご
らん、という指導では、全く納得のいく話し合いができませんでした。あ
あいえばこういうAくん。あの手この手を使ってもうまくいかない。話が
しっくりと落ちない。そんな日々が続きました。

 そんな中、印象に残る出来事がありました。
 ある日のこと。掃除が終わった子どもたちが、次々に教室に帰ってくる
時、Aくんは、自分の席に座って歌い始めました。ボーイソプラノのよう
な、高く美しい声で、です。しかも、オペラ歌手のような素振りで歌うの
です。

 私はとても楽しい気分になり、彼に応答するようにオペラ歌手のように
歌いました。すると、また彼がそれに答えて歌声で返します。周りの子ど
もたちは、そのやりとりをみて、大喜びで笑い転げます。

 Aくんと私の束の間の歌声のやりとりでしたが、これまでの私がAくんと
交わしたやりとりとは異なりました。「ああ、Aくんと、やっと話ができ
た。」と感じられるものでした。

 言葉のやりとりによる意味の交換では得られなかった共感を、感じるこ
とができたように思えたのです。

3.見えないものを共に見る

 インプロのゲームに、『イエス・アンド・レポート~空想編』というも
のがあります。
 ルールは次のようです。

・AさんとBさん、二人組になります。
・Aさんが、どこかを指差して「あ、こんなところに、~がある(いる)。」
といいます。
・Bさんは、「ほんとだ!」と言って同意し、「しかも…」と、その物へ
の描写を付け加えます。例えば、次のような会話が生まれます。

(例)
Aさん「あ、こんなところにねこがいるよ。」
Bさん「ほんとだ。しかも、笑ってるよ!」

 このゲームでは、相手が提案した「見えない何か」を一緒に驚きと共感
をもって見ます(イエス)。そして、描写を重ねる(アンド)ことで、実
在しない世界がたちあらわれてきます。
 ※実際のゲームの様子は、http://www.youtube.com/watch?v=1Z9XRtoNaBY
 でご覧いただけます。

 Aくんと私の歌声の応答は、このゲーム同様、ある意味、現実ではない
世界を共有したのだと思います。現実的な意味を含むやりとりではない、
空想・即興のやりとりは、時に豊かな共感の世界に連れ出してくれます。

 きっと、多くの教員の方々が、「笑い」、「ユーモア」、あるいは「ボ
ケ・ツッコミ」のようなやり方で子どもたちとやりとりをしておられるこ
とでしょう。インプロも、子どもの発言を「いかす」「肯定する」という
部分等、共通点が多いと感じます。

4.インプロ・マインドを持って会話する。

 その後も相変わらずAくんとの衝突や指導場面は幾度も訪れましたが、
同時に、インプロ的なやりとりが、彼との関係を少しずつ変えていきま
した。

 Aくんは、朝の挨拶の仕方も独特でした。「おはようございます。」と
は絶対に言いません。私の姿を見るなり、「うわ、宇宙人や!」と言って
おどけてみせたり、「誰、この人?」と言って素知らぬふりをしてみせた
り、「バーン」と打つ真似をしてきたり。しかし、何らかの形で関わって
きます。

 一方、私も、彼によって見立てられた役になって、彼のオファー(提案)
をイエス(受容)、アンド(自分のアイデアを加える)しながら関わるよ
うになりました。時には宇宙人として話しかけ、時には見知らぬ他人にな
って質問をし、打たれたら打ち返す…という感じです。

 彼の言葉を字面で受け取って感情的になったり、理詰めで話をしてわか
りあおうとしたりするべきではなかったのだ…彼と関わる難しさを感じ、
自分自身に大きな宿題を日々課される中で気づいたことは、Aくんの表現
の土俵にのること(Yes, and)、Aくんの行動や発言をいかすこと
(Give your partner a good time.)…驚くほどインプロ・マインドと通じ
るものでした。

 彼の言動は、教師への好ましくない言葉遣い、不適切な発言と解釈すれ
ば、指導の対象となるものも多くありました。一方、ファンタジー、ある
いは即興演劇(インプロ)と解釈し、インプロ・マインドを持ってその場
面や彼自身を肯定的にみせるよう試みることで、トラブルは減り、指導を
していないにもかかわらず彼との関係が改善されていくような実感があり
ました。もちろん、全てにそのように対応することはできず、試行錯誤の
毎日でしたが…。

5.「役を演じる」ことを通しての変化

 Aくんはまた、「役を演じる」ということを通して、変わっていった児
童の一人でした。

 いわゆる「悪い」とみなされる行動もみられたAくん。そんなAくんは、
劇団の方と一緒に作った創作劇の中で、自ら窃盗団のリーダーという“悪
組織のボス役”を買って出、熱演したのです。

 少し悪ぶってみたり、反抗してみたり…そうした行動をとりがちな思春
期の頃に、自らの身体を使って他者を演じることで、何かもやもやとした
感情がはき出され、ありたい自分に戻っていく、そんな力を感じました。

 その後も、Aくんは国語の時間に自分で選んだ歴史上の人物「ノストラ
ダムス」になりきって半生を語ったり、児童会長になったりと、活躍が続
きました。

 時々、Aくんは「いろんな先生がおれのことを、悪いことをしていると
いう目つきで見てくる。」とぼやくことがありました。確かに、問題が続
くと、何気なくそうした目で子どもたちを見てしまう傾向にあることが反
省されました。

 そう訴える彼にとって、「役を演じる」ことを通して、周囲の否定的な
まなざしから解放され、異なる視線を得ることが、変化のきっかけとなっ
たのかもしれません。

 季節が冬になる頃、私とAくん、そしてAくん自身についてもトラブルは
起こらなくなり、もう虚構のやりとりがなくとも、穏やかに話すことがで
きるようになっていました。もちろん、数々の衝突と和解を繰り返したわ
けですが、様々な「役」を演じることが果たした役割が小さくはなかった
ように感じています。

6.見えないものを想像する

 私たちは、人から見られ、人から様々なイメージを与えられ、様々な役
割を生きています。私自身を振り返ってみれば、中学校の時は「大人しい
子」という見られ方をしており、それゆえに、自分の違う面を出しにくく、
こうありたい自分と人から見られている自分とのギャップに苦しんだこと
もありました。

 「本当はこうありたい」という思いを持っていながら、なかなか人の見
る目、人が作ったイメージから脱出できず、生き苦しさを感じてしまう…
そうした葛藤を、少しでも打ち破るきっかけを、演劇を始めとする表現は
作れるのではないだろうか…そんな思いが表現を取り入れた教育に向かう
原点になっています。

 一生、自分であることからは逃れられません。しかし、演劇の中で誰か
になってみることはできます。そして、誰かになってみるということが、
現実世界の自分、そして自分と他者との関係をも変えていくことに、つな
がるように思うのです。

 最後に、覚和歌子さんの「うすみどり」という詩を引用します。どんな
にわかろうとしても、決してわかりきることのできない他者への想像力が、
表現することを通して育っていく社会を創っていきたいと思います。

「うすみどり」 覚 和歌子

電車の中では
わざと けたたましく笑うの

興味をいだいてほしい
愛されてる気持ちと
似てるから

注目してください
生きててもいいのかもと
思えるから

でもね
ホームにおりたら
うすみどりの五月の風 すいこんで
胸をいっぱいにしてる私のこと
ほんとはいちばん 知っててほしい

『海のような大人になる』理論社,2007.

授業づくりネットワーク誌の最新号
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
------------------------------------------------------------------
【編集後記】
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 「どんなにわかろうとしても、決してわかりきることのできない他者へ
の想像力」…。このメルマガの後記でも何度か書いてきたことですが、教
育的「善意」がしばしば子どもたちを苦しめている。その背景にあること
を言い当てているなあと、思いました。教師は、生徒のことを言語的にわ
かろうとする。しかし、当たり前のことですが、子どもであるか大人であ
るかを問わず、相手のことを(すべて)理解できるわけがないのが人間同
士の関わり合いの前提です。わからないからこそ、わかろうと様々なアプ
ローチを繰り返す…ここにクラス、授業、のおもしろさが凝集されている
とぼくは思うのですが…。
 藤原さんには、一年間お世話になりました。インプロのこだわり続けた
連載。ぼくが、まさに書いていただきたいと願った中身でした。感謝いた
します。

 さて、ようやくお話できる段階になりました。ぼくの新しい本が、4月
に明治図書から刊行になります。『「対話」がクラスにあふれる!国語授
業・言語活動アイデア62』です。インプロ実践も、ほんのいくつかですが、
紹介することができました。小学校・中学校にどんどん広がってほしいと
願っています。

 次号は、副編集長(ハイブリッドチーム編集担当)佐内信之さんの最終
回です。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第216号(読者数1891) 2012年3月16日発行
編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
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編集部ではチームに分かれてMLによって原稿検討を行っています。本メ
ールマガジンの記事を読んでいただいた率直なご意見・ご感想をいただけ
ると幸いです。本メールマガジンの内容に少しずつ反映をしていきたいと
考えています。
 編集長:石川晋
 副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之
登録・解除 http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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ぼくは「対話」の「対象」を間違えていました

1 :ぼくは感情のない人形 ◆r.W5MpcGNo :2012/05/14(月) 17:39:22.18 ID:qQlkDSLa0 ?2BP(1000)ここには凡人しかいませんでした。さようならhttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1336940728/

写真展開催中! «  | BLOG TOP |  » 今日は北海道公立高校入試の結果発表だった

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石川晋

Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
https://www.facebook.com/profile.php?id=100000528475920
ぼくにできそうなことは、どんどんお受けしますので、遠慮なくお知らせください。FBのメッセンジャーが一番確実です!

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