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2017-08

★学びのしかけプロジェクトメールマガジン180号 増川秀一さん「「インクルージョン発想の授業づくり その4」」 - 2011.12.18 Sun

私が編集するメールマガジンの最新号です。今号は増川秀一さん。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
180号 2011年12月18日発行
(毎週火金日発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1.「インクルージョン発想の授業づくり その4」  
          「インクルージョン」編集委員
                  山形県・公立小学校 増川 秀一
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 増川秀一さんの久々にご論考です。特別支援学級の参観を基に考察を巡
らせていただいたものです。長文ですが、是非とも丁寧にお読みください。
                           (石川 晋)
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1.「インクルージョン発想の授業づくり その4」  
          「インクルージョン」編集委員
                  山形県・公立小学校 増川 秀一
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 先日,勤務校の特別支援学級で,「さつまいもパーティーをしよう」と
いう生活単元学習の授業を参観させていただきました。生活単元学習とは,
児童生徒が生活上の目標を達成したり,課題を解決したりするために,一
連の活動を組織的に経験することによって,自立的な生活に必要な事柄を
実際的・総合的に学習するものです。

 参観させていただいた特別支援学級に在籍している子どもは1年女児か
ら5年男児までの7名ですが,学年,性別,そして,それぞれが抱えてい
るハンディキャップも違います。このような子どもたちが同じ教室に集ま
り,本当に授業が成立するのか,私は不安な気持ちを抱きながら教室に向
かいました。

 教室に入ると,7名の子どもが机を横にならべ,黒板前で説明するR教
諭の話に耳を傾けていました。さらに,4人の教師が子どもたちの間に座
り,学習支援を行っていました。子どもたちは落ち着いた様子で椅子に座
り,笑顔で学習に取り組んでいます。

R教諭「さつまいもで作ることのできるおかしには,どんなものがあった
かな。」
Aさん「さつまいもケーキ」
Yさん「昨年,さつまいもチップスを作ったよ。ピーラーで指切ったけれ
  ど」
Sさん「スイートポテト」
Hさん「さつまいもモンブラン」

 特に,Yさんは,なかなか発言できない友達に対し,黒板に掲示されて
いた,「さつまいもで作ることのできるおかしの写真」を指差しながら,
「名前が言えないんだったら,あの写真を指差せばいいんだよ。」と優し
く教えてくれていました。また。いつも校内を走り回っているAさんや,
集団行動をうまくとることのできないSさん,集中力に欠け,なかなか指
示通りに行動できないHさんが,さつまいもパーティーで自分が作りたい
ものを真剣に考え,発言していました。上記のような授業の様子を参観し,
私の心配は全く的外れなものであったことに気がつきました。では,どう
して,学年や性別,能力差の大きい集団でも,子どもたちの学習が成立で
きたのでしょうか。以下,3つの視点で考えていきたいと思います。

(1)子どもの学び方の把握

 「子どもの学び方の把握」とは,教師が子どもの学び方の特性をみとり,
子どもの多様な学び方に対応した授業を仕組んでいくことが大切であると
いう考え方です。

 授業後,私は,今回中心となり授業を仕組まれたR教諭に,それぞれの
児童の実態や学び方の特徴をどう捉え,学習を仕組んでいったのかについ
て質問しました。その回答の中で,特に心に残ったのが以下の話です。
「子どもたちは,畑で栽培したものを収穫し,それを使って調理し食べる
という活動が大好きです。たとえば,じゃがいもでカレー作り。大根でお
でん作りなど。これは,特別支援学級の子どもたちも同じです。でも,A
さんやSさんは,1年生のころは,包丁や火が怖くて何もできませんでし
た。そこで,調理の過程でその子どもができることを経験させ,毎年,活
動をくり返すことで,子どもたちが見通しをもち少しずつできることが増
えていくように仕組んできました。ただ,毎年作りたいおかしを子どもた
ちに選択させたわけではありません。昨年度は,スイートポテトを全員で
作りました。一種類のおかしを作るだけで精一杯だと判断したからです。
でも,今年度は,さつまいもで作るおかしの種類を増やし,子どもたちに
自分が作りたいおかしを選択させました。子どもたちの実態から,それぞ
れの子どもに応じた支援をすれば可能だと判断したのです。」

 上記の話を聞き,改めて子どもの得意な学び方,実態を把握することの
大切さを感じました。

 今回の授業では,調理の際,それぞれの子どもが自分でできることは何
で,教師が支援すべき点はどこなのか,7名の子どもの実態に応じた学習
活動が仕組まれていました。レシピ作りの際も,一人で考えて書いたり,
手本を見ながら写したり,シールをはって完成させたり,子どもたちの実
態に応じた支援が講じられていました。
 このような細やかな手立てがしかけとなり,子どもたちの学習に対する
意欲を高めたり,子ども同士の協力といった関わりを生み出しているのだ
と感じました。

(2)授業目標の設定

 「授業目標の設定」とは,教師が具体的な目標から抽象的な目標へと設
定を変えることで,子どもの感性や創造性,個性の尊重に向かう授業への
可能性が高まっていくという考え方です。

 本時は「さつまいもを使って何を作るか決めたり,レシピを作ったりで
きる」といった目標でした。学年,性別,そして,それぞれが抱えている
ハンディキャップも違う子どもたち全員が目標を達成できるようにするた
めには,上記のような学習のゴールを確認できる程度の抽象的な目標の設
定が有効であると感じました。全員が達成するべき目標は同じでも,その
目標を達成するためには,それぞれの子どもに合った多様な学びのスタイ
ルを尊重したり,手立てをとったりする必要があるからです。

 実際指導案にも,全体の目標を達成するための個別目標が設定されてい
ました。たとえばSさんは,「さつまいものお菓子作りの話し合いに参加
し,まねをして返事したり,名前磁石をはったりすることができる。」Y
さんは,「作りたいお菓子材料や作り方がわかり,レシピを見ながら作る
ことができる。」といった内容です。

 目標の設定についてR教諭は,「先に目標や,活動の形があるのではな
く,その子どもができること,できないことを明らかにし,まずはできる
ことをもとに目標を設定していきます。」と,話されていました。その際,
子どもたち全体に関わる大まかな目標を設定し,その後個別目標を設定す
ることは,全体に関わる目標を達成する上で,子ども一人一人にどのよう
な学びの場を設定すればよいのか,また,どのような支援が必要なのかを
明らかにする上で有効であると感じました。

(3)教師の引き出し

 「教師の引き出し」とは,それぞれの教師が,これまでの実践や研修等
で身につけてきた指導技術や授業ネタ等の財産のことです。

 生活単元学習を仕組むにあたり,R教諭からは,「生活単元学習で,子
どもたちが取り組む一連の活動は,各教科等の系統に基づいて組織される
のではなく,児童生徒の生活の流れやまとまりも大切にしながら計画・展
開されるものです。だから,能力の違う子どもたちが生き生きと活動でき
るようにするためには,子どもの生活の系統性にも目を向けることが大切
です。将来、その子どもが社会参加できるようにするために必要な力をつ
けてあげたいのです。」といった話をお聞きしました。では,T教諭は,
どのような経験から子どもの生活の系統性にも目を向け,授業づくりを行
うようになったのでしょうか。

 R教諭は,特別支援学校での勤務経験や特別支援学級担任としての経験
が長く,これまで様々な子どもたちの指導に当たってきました。さらに,
個人差のある子どもが取り組むことのできる多種多様な活動を仕組むため
には,まずは教師自身が学ばなければならないということで,様々な研修
会にも積極的に参加してきたと聞きました。そのような積み重ねの結果,
教師側の思いや各教科の系統による単元構成から,徐々に子どもの生活の
系統性に目を向けた授業づくりにシフトしていくことができたと話されて
いました。

 以上,特別支援学級の授業参観を通し考えたことをまとめてみました。
私は現在6年生を担任していますが,子どもの生活の系統性にも目を向け
ることは,普通学級で授業づくりを進める上でも大切であると感じました。
立教大学教授の奈須正裕氏は,もし学校を子どもが生活するところだと考
えたらという視点から,生活と学習を無理に分ける必要がないことを主張
し,その理由を以下のように述べています。
 「生活するというのは,ただ生存すること以上の主体的な営みであり,
昨日より今日,今日より明日といった具合に,自分たちの生活を日々新た
なもの,より納得のいくものに更新していこうとする自覚的な動きを含む
と考えるからです。すると,子どもたちは自分たちが望む生活を実現する
のに必要となる知識や技能を,自ら進んで学ぼうとするでしょう。つまり,
子どもたちがよく生活しようとすれば,よく学ばざるを得ません。学校を
子どもが進んでよく学ぶところにしようというのと同じことなのです。」

 このように,授業も子どもたちの生活の場の1つと考えるならば,学習
の系統性だけでなく,子ども一人一人の生活の系統性にも目を向け,得意
としていることや課題面などを把握し,授業づくりに生かしていくという
発想は,子どもたちの学習への参加意欲を高め,意味のある学習活動を仕
組む上で,重要な学びのしかけになると考えています。

授業づくりネットワーク誌の最新号
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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 増川さんの原稿では、いつも、エピソードの切り取り方とその描写に感
嘆します。冒頭の支援学級の児童のやりとりの描写など、もちろんすごい。
 でも今回はそれだけでなく、特に、R教諭への事実上の「ライフヒスト
リーアプローチ」を経て、「子ども一人ひとりの生活の系統性」に眼を向
けるようになっていったということへの焦点化がすごいと思いました。
 私は中学校3年生の担任ですが、まさに私が日々の中で考え考え実践し
ていてうまく言葉にできないことを、見事に言語化してくださっていると
感激しました。

 次号は、ワークショップチームから、岡山洋一さんです。どうぞお楽し
みに。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第180号(読者数1795) 2011年12月18日発行
編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com)
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編集部ではチームに分かれてMLによって原稿検討を行っています。本メ
ールマガジンの記事を読んでいただいた率直なご意見・ご感想をいただけ
ると幸いです。本メールマガジンの内容に少しずつ反映をしていきたいと
考えています。
 編集長:石川晋
 副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和・佐内信之
登録・解除 http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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Author:石川晋
北海道の中学校教師を退職しました。
都内に潜伏して、ゆっくりのんびりしなやかに、教育、芸術、自然の話をしながら、これからの自分のことを考えつつ、新しい状況に対応する「学びのしかけ」のことを考えて行きます。facebookアカウントは、
https://www.facebook.com/profile.php?id=100000528475920
ぼくにできそうなことは、どんどんお受けしますので、遠慮なくお知らせください。FBのメッセンジャーが一番確実です!

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